スペインのプラド美術館が一歩前進! 作品解説にもジェンダー視点を盛り込む
スペインのプラド美術館が、作品名などを記したキャプションボードを一新する。同美術館の所蔵品構築に関わった女性のパトロンやアートコレクターなどに光を当て、芸術分野における女性の貢献を広く知ってもらうためだ。
プラド美術館では近年、美術史に名を残す女性アーティストの展覧会を開催している。たとえば、ルネサンス期のイタリアで女性として異例の成功をおさめたソフォニスバ・アングイッソラ、そのアングイッソラに影響を与えたとされるラヴィニア・フォンターナ、17世紀フランドルの画家クララ・ピーターズなどだ。しかし、芸術の振興に尽くした女性に焦点を当てることは、これまでなかった。
「El Prado en feminine(女性によるプラド)」と名付けられたこの新しいプログラムは、ムルシア大学の美術史家、ノエリア・ガルシア・ペレスの研究に基づき、スペイン平等省女性研究所と共同で策定されたものだ。ペレスは、プラド美術館が所蔵する制作年が1451年から1633年までの作品のキャプションボードを分析し、その結果を今年3月に同館で開催されたシンポジウムで発表。来年3月のシンポジウムでは、さらに議論を深めることになる。
上記の時代に該当する絵画や彫刻についてはタイトルや解説文の見直しが行われ、作品に関連する女性パトロンの表記から「〜の妻」といった文言が削除されている。解説文の変更の一例としては、ブラッディ・メアリーと言われた英国のメアリー1世の残酷さをことさら強調するような表現が削除された。
また、ピーテル・パウル・ルーベンスやピーテル・ブリューゲル(父)が描いたイサベル・クララ・エウへニアとその夫アルベルト7世の肖像画など、これまで展示されていなかった作品についても修正が行われた。ティツィアーノの《John Frederick of Saxony(ザクセン公ヨハン・フリードリヒ)》(1550)、フアン・パントーハ・デ・ラ・クルスの《Isabel de Valois(エリザベート・ド・ヴァロワ)》(1605)、バルトロメ・ゴンサレスの《Queen Anne of Austria(アンヌ・ドートリッシュ)》なども対象になっているほか、館内で展示場所が移動された女性の胸像もある。
今後は、プラド美術館を支えてきた女性後援者の貢献に焦点を当てた館内ツアーも計画されている。(翻訳:石井佳子)
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