セザンヌ、バスキア、ニューマンも。大富豪コレクター、ケン・グリフィンが名画コレクションを“こっそり”移動
US版『ARTnews』のトップ200コレクターズの1人、大富豪のケン・グリフィンが、自らが評議員を務めるシカゴ美術館から複数の有名作品を移動していたことが明らかになった。移動先は、20世紀の鉄鋼王ラルフ・ハバード・ノートンの名を冠したノートン美術館(フロリダ州ウエストパームビーチ)だ。
現在ノートン美術館に展示されているグリフィンのコレクションは、マーク・ロスコの《No.2 (Blue, Red and Green) (ナンバー2 〈青、赤、緑〉)》(1953)、ロイ・リキテンスタインの代表作《Ohhh... Alright...(オー、オールライト)》(1964)、ロバート・ライマンの無題の作品、ウィレム・デ・クーニングの《Interchange(インターチェンジ)》(1955)、ジャクソン・ポロックの《Number 17A(ナンバー17A)》(1948)などの絵画作品だ。
第一報を伝えた『ヴァニティ・フェア』誌に、グリフィンはこう語っている。「ノートン美術館は、わが国で最も重要で美しい美術館の1つ。南フロリダに住む人々やそこを訪れる旅行者が、今回移設した作品をはじめ世界中から集められた数多くの美術品を楽しみ、インスピレーションを得てくれることを願っている」
US版『ARTnews』のトップ200コレクターズにランクインしているグリフィンは、長い間、自身のコレクションをシカゴ美術館で展示してきた。たとえば、ロスコの作品は2020年10月から22年6月まで、ライマンの作品は17年まで同美術館で見ることができた。
また、目を疑うような高額で美術品を購入し、何度も大ニュースになっている。デ・クーニングはレコード会社経営者で映画プロデューサーでもあるデビッド・ゲフィンから3億ドルで、ポロックは2億ドルで購入した。この2つの作品も、シカゴ美術館に展示されていたことがある。
そのほかにも、ポール・セザンヌ(6050万ドル)、ジャスパー・ジョーンズ(8000万ドル)、ジャン=ミシェル・バスキア(1億ドル)、バーネット・ニューマン(8420万ドル)といった有名アーティストの作品を購入。中でもニューマン作品の購入額は、抽象表現主義の作家としては新記録だった。
今回の美術品移設は、グリフィンが創業したヘッジファンド運営会社シタデルが、今年マイアミに移転したことに続くニュースだ。また、この10年間にグリフィンは、パームビーチの不動産に3億5000万ドル(約480億円)を投資したと伝えられている。グリフィンは南フロリダのボカラトン出身で、1989年にハーバード大学を卒業したのちシカゴに移った。
2018年、グリフィンはノートン美術館に2000万ドルを寄付し、新棟の命名権と館長の指名権を得た。19年にはブルームバーグに対し、「自分の過去と未来の名誉のために、パームビーチで特別な取り組みをする機会が与えられた」と述べている。
また、『ヴァニティ・フェア』誌によると、ノートン美術館にはグリフィンが収集に情熱を傾けるきっかけとなった3点の美術品、エドガー・ドガの絵画《Dancers in Green(緑の衣装の踊り子)》、ドガの彫刻《Little Dancer, Aged Fourteen(14歳の小さな踊り子)》、クロード・モネの睡蓮の作品も展示されているという。
シカゴ美術館、ノートン美術館ともにUS版『ARTnews』のコメントの求めに応じていない。(翻訳:石井佳子)
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