アプロプリエーション・アートの代表格デイヴィッド・サリーに盗作疑惑。個展から作品撤去

ロサンゼルスのギャラリーで開催中のデイヴィッド・サリー展から、盗用疑惑を指摘されたペインティングが撤去された。法律の専門家はフェアユースを根拠とした弁護は困難だと指摘しており、アプロプリエーション・アートをめぐる議論が再び熱を帯びている。

盗用が疑われているデイヴィッド・サーレの作品《Hatchet》(2025)。Screenshot: via Instagram/@josielewisart
盗用が疑われているデイヴィッド・サリーの作品《Hatchet》(2025)。Screenshot: via Instagram/@josielewisart

ロサンゼルスのシュプリュート・マーガース(Sprüth Magers)で開催中のデイヴィッド・サリー(*1)展で、他のアーティストの作品を盗用した可能性が批評家たちから指摘された絵画が展示から撤去された。

*1 ARTnews JAPANでは発音に準拠し、デイヴィッド・サリーとする

《Hatchet》(2025)と題された本作は、白と黒のドレスをきた女性がスレッジハンマーを振り上げる姿を描いたものだ。展覧会「My Frankenstein」は2月24日に開幕したが、サリーの作品はケリー・リームスティンのペインティング《Impact》(2021)との類似がSNS上で指摘されている。

指摘のなかで最も注目されたのが、ミネアポリスを拠点におくアーティスト、ジョジー・ルイスだった。彼女は約1万回再生された動画の中で、「サリーはリームスティンのアイデアを盗んだのか、それとも単なる借用なのか」と問いかけた。リームスティンはのちにこの動画を自身のInstagramでシェアしたが、ARTnewsの取材にはコメントを控えている。

サリーは、1970年代半ばから80年代初頭にかけてニューヨークで台頭したアート・ムーブメント「ピクチャーズ・ジェネレーション」と結びついた作家として知られる。シンディ・シャーマンやルイーズ・ローラー、ロバート・ロンゴリチャード・プリンスなど、このムーブメントに名を連ねるアーティストたちは、大量消費社会に溢れるイメージを作品の主題とし、映画や映像、テレビ、広告、さらには他のアーティストが手がけた作品から引用した断片を、写真、絵画、グラフィックデザインに取り込んだ。サリーは、このピクチャーズ・ジェネレーションとの関係を批評家に認められた数少ない画家の一人だった。

借用をめぐる議論が再燃

アプロプリエーション・アートと呼ばれるこうした手法は、これまでにも議論を引き起こしてきた。例えばプリンスは、フランス人写真家、パトリック・カリウの写真を借用した《Canal Zone》(2008)をめぐり、長期にわたる法廷闘争を繰り広げた。カリウは最終的に、プリンスとガゴシアン、そして出版社のリッツォーリを著作権侵害で提訴した。

今回の騒動について、ギャラリーのオーナーであるモニカ・スプリュースとフィロメーヌ・マーガースにコメントを求めたところ、次のような返答があった。

「サリーはポップカルチャーや広告、美術作品、自身の写真などさまざまなソースを断片的に借用し、キャンバス上に独自の解釈を繰り広げてきました。これは過去から学び合うと同時にお互いに触発されるという、作家たちの営みに倣ったものです。サリーの作品も、許可なく他のアーティストに使用されてきました。最新の展覧会『My Frankenstein』においても、彼はオフラインとオンラインを問わずさまざまな要素を引用しています。もしかしたら、見覚えのあるものも含まれているかもしれません。ケリー・リームスティンの作品を使用したことで、著作権をめぐる議論が新たなオーディエンスの間で再燃したことも、サリーは認識しています。この対話は重要だと私たちも認識していますが、作家との協議の末、双方のアーティストを尊重する意味でも、展示から作品は撤去しました」

サリーにもコメントを求めたが、返答は得られなかった。

だが、アートと法律を専門とするニューヨーク大学の教授、エイミー・アドラーによれば、訴訟に発展した場合、いずれのアーティストも現役で活動していることから、サリーはフェアユースを根拠に弁護することは困難になる可能性があるという。アドラーはさらにこう続ける。

「サリーは、アートにおける借用をめぐる議論の第一人者と言える人物です。リームスティンへの配慮のジェスチャーとして、作品を撤去したことは評価できますが、この行為は著作権訴訟において法的にはあまり効果はないでしょう」

また、サリーが提訴された場合、裁判ではいくつかの争点が浮上する可能性があるとアドラーは分析する。例えば、借用された作品のメッセージや意味が十分に改変されているか、両作品が異なる意図のもとに制作されているか、さらに両者が異なる市場に属していると示せるかどうかだ。アドラーはさらにこう続ける。

「ウォーホル財団対リン・ゴールドスミス裁判における判決が2023年に下されて以来、フェアユースの裁判では目的が何よりも重視されるようになりました。そのため、サリーのような被告は法廷で苦しい立場に立たされています。なぜなら、彼とリームスティンはともに、ファインアートを制作する目的をもつとみなされるからです」

近年はAIを活用した制作に注力

なお、今回の展覧会に出品された油彩・アクリル作品は、人工知能(AI)を用いて制作されたものだ。近年サリーはエンジニアと共同で、厳選した自身の作品群を訓練データとした生成AIを開発し、新たなイメージの構成を出力させるという手法をとっている。

ギャラリーのウェブサイトによれば、この展覧会は「今なお進化し続けるAIという技術を受け入れることへの葛藤を、サリーが認識していることの表れ」だとしている。また、今回発表された作品群は、メアリー・シェリーの小説『フランケンシュタイン』を引き合いに出しながら、「科学的野心がもたらす意図せぬ結果の強烈なメタファー」としても機能すると説明されている

2025年4月にタデウス・ロパックで開催された展覧会「Some Versions of Pastoral」に際し、アート・ニュースペーパーの取材に応じたサリーは、AIに画像を生成させるための学習プロセスについて「長い試行錯誤を要した」と述べた。一方で、それは「とてもやりがいがあり、制作への関与を積極的に促してくれる」経験だったとも語っており、こう続けた。

「空間のなかの人物像や家庭用品、自然物といった日常的な風景を太いストロークで描いたスケッチのような絵画をAIに学習させていたのですが、作品を学習させる過程はより複雑になっていきました。しかし、重要なのは学習させる絵画の題材ではなく、筆でエッジを作り出すこと。つまりは意図が込められた筆致や形を作家が生み出すことなのです」

(翻訳:編集部)

from ARTnews

あわせて読みたい