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  • 2023.01.18

アメリカ再構想に挑むアーティストで活動家のハンク・ウィリス・トーマスが、ペース・ギャラリーに所属。最新作はマーティン・ルーサー・キング・ジュニア夫妻のモニュメント

マーティン・ルーサー・キング・ジュニアと、その妻コレッタ・スコット・キングに捧げるモニュメントをボストンで発表したばかりのアーティスト、ハンク・ウィリス・トーマスが、世界的ギャラリーの1つであるペース・ギャラリーに所属したことが発表された。

ハンク・ウィリス・トーマス。Photo: Jeff Vespa

トーマスの所属は、マーティン・ルーサー・キング・ジュニア夫妻のモニュメントが落成した数時間後、1月13日の午後、ギャラリーのニュースレターで発表された。 

世界中に8つの拠点を持つペースは、ほんの一握りのメガギャラリーしか達成していない巨大な事業規模を誇っており、サム・ギリアムジェフ・クーンズ、マヤ・リン、ロバート・ロンゴ、アグネス・マーティン、ジュリアン・シュナーベルなど、多くのアーティストを擁する名門である。 

トーマスは昨年閉鎖されたロサンゼルスのギャラリー、ケン・グリフィンと契約していたが、ペースと同ギャラリーの合併に伴って所属が決まった。 

黒人とバスケットボールの関係、広告における黒人と白人の表現、人種差別に対する抵抗の方法など、幅広いテーマを多様なアプローチで表現してきた彼は、2018年にグッゲンハイム・フェローシップを受賞。その後、2019年から2020年にかけて全米で巡回展示された。 

また2016年にアメリカ人アーティスト、エリック・ゴッテスマンとともに、「For Freedoms」という名のグループを結成。当初はアーティストが運営する政治行動団体としてスタートしたが、現在はアーティストが作品を通じてアメリカという国を再構想する機会を提供するという、より貴重な使命を担っている。さらにトーマスは2020年、アメリカ大統領選に向けて、国民に政治意識を高めてもらうことを目的としたアーティスト主導のグループ「Wide Awakes」も立ち上げている。 

2021年にはUS版ARTnewsの「Deciders」号の編集にも携わっている。この号は、現在、文化的な対話に貢献している政治やアート関係者、アーティストなどの個人や施設にスポットを当て、その対話を前に進める手助けをすることを目的としていた。 

トーマスは、2006年に最初の個展を開催したニューヨークのジャック・シャインマン・ギャラリーの代表も引き続き務める。彼は同ギャラリーとともに、2017年から一緒に展示を行っているロンドンのベンブラウン・ファインアーツ、2010年から4回個展を行っている南アフリカのグッドマンギャラリーにも名前が登録されている。 

ボストンに設置されたマーティン・ルーサー・キング・ジュニアとコレッタ・スコット・キングに捧げるモニュメント、《Embrace Memorial》は、高さ約6メートル、幅約12メートルの大きさで、一対の腕が抱き合わされたような形になっている。この作品についてトーマスは声明で、「私たち一人ひとりが、この2人のどちらかになる能力を持っていること、あるいは実際に何かからインスピレーションを得て、より影響力のある存在になる能力を持っていることに気づいてもらいたい」と語っている。 

トーマスは、ギデオン・アパ、ヴァージニア・ジャラミロ、アカイェ・ケルネン、デヴィッド・リンチらに続いて、ペースが昨年迎え入れた8人目のアーティストとなる。(翻訳:編集部) 

from ARTnews

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