画像生成AIは著作権侵害かフェアユースか。アーティストたちが大手3社を相手に集団訴訟
画像生成AIが著作権を侵害したとして、アーティストたちが集団訴訟を起こした。Stability AI、Midjourney、DeviantArtの3社を相手どり、カリフォルニア州北部地区連邦地方裁判所に訴状が提出されている。
Karla Ortiz、Kelly Mckernan、そしてSarah Andersenの3名のアーティストによる集団訴訟は、法律事務所のJoseph Saveri Law Firmを通じて起こされた。3者は自分たちの作品が画像生成AIの学習に使われ、そこから派生的画像が生み出されていることが、著作物に関する排他的権利を定めた法律を侵害し、デジタルミレニアム著作権法や不正競争防止法違反だと主張している。
訴状には、「Stability AIの画像生成AI、Stable Diffusionの急速な成功の背景にはコンピュータサイエンスの飛躍的進歩があるが、問題は、インターネット上の無数の画像を作者に無断で盗用したことだ」と書かれている。
AI画像生成は「21世紀のコラージュツール」?
訴訟対象になった3社はいずれも、Stability AIが開発したソフトウェア・ライブラリである、Stable Diffusion上にAI画像ジェネレーターを構築している。このモデルは、「diffusion」と呼ばれる手法によって、学習用画像のコピーから新たな画像を生成し出力できるよう訓練されたもの。訴状では、「このモデルの主な目的は、訓練に使われた画像に忠実な画像を出力すること。つまり、複製や派生作品であることを意味している」と指摘されている。
原告団は、学習用画像に使われたアーティストによるオリジナル画像のコピーが、派生作品の作成に利用されていると主張。派生作品とは、コーネル大学法律情報研究所の定義によれば、「オリジナルに由来していることが明らかなほどオリジナルの要素を取り込んでいる」もの。原告団はまた、画像生成AIはアート界に大きな損害を与えかねない「21世紀のコラージュツール」にほかならず、著作権で保護された作品から構築されたものだと主張。さらに、こうした画像生成ツールは、「フェイク」の作成につながる危険性をはらんでいるとも指摘している。
たとえば、韓国のアーティスト、キム・ジョンギが亡くなった後、5Youというユーザー名の元ゲーム開発者がStable Diffusionでキム・ジョンギ風の画像を生成できるモデルを作って炎上した。これ以外にも、自分の作品そっくりの画像を複製されたと訴えるアーティストは少なくない。
専門家によると、今回の訴訟にはいくつかの問題点があるという。
まず、著作権で保護されるのは、作風ではなく特定の画像だけだという点だ。一方、コラージュは「批評、コメント、報道、教育(教室での使用、学術、研究のためのコピーを含む)、および変容的な創作といった目的のための」著作権法の例外である「フェアユース(公正使用)」で保護される。
派生作品と呼ぶのは「よくある誤解」
「diffusion」という技術的プロセスが、この訴訟で正しく定義されているかも問題点の1つだ。サセックス大学の知的財産法の専門家、Andres Guadamuz博士は、訴状に関する自らのブログ記事で、「機械学習モデルが単に画像を保存し、コラージュを生成するものだというのはよくある誤解だ」と書いている。
Guadamuz博士によると、このように一般化するにはあまりに技術が複雑で、Stable Diffusionは学習の初期段階であってもコピーした作品を保存することはない。そうではなく、ある物体を表現するときに空間と色がどのように関係しているかというデータを、学習のために与えられたものから「学んで」記憶しているのだという。博士は、裁判で専門家がこの複雑極まりないプロセスを説明すれば、訴状の主張を覆すことができるかもしれないと書いている。
こうした複雑さが一般に認識されている盗作の概念からかけ離れたものなのか、あるいは、AIで生成された画像が本当に著作物のフェアユースに当たるかどうかは、裁判官や陪審員の判断に委ねられる。
Stability AIの広報担当者は、こうコメントしている。「私たちはこうした事案を真摯に受け止めていますが、これがフェアユースではないと考える人は、技術を理解しておらず、法律も誤解しています」
一方、大手ストックフォトのゲッティイメージズが最近発表した声明によると、Stability AIが学習用に同社のウェブサイト上の画像を用いているとして、法的措置を検討しているという。これに対しStability AIの広報担当者は、ゲッティイメージズがロンドンの高等法院に提出した申し立てについては、まだ文書が送達されていないとして次のように回答した。
「法的措置が意図されていることを、報道機関を通じて知らされるのは異例のことです。私たちはまだ文書の送達を待っているところで、文書が届き次第、適宜コメントを出す予定です」
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