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NFTがアート界に巻き起こした旋風。コレクターはどんなアートを買う?

2021年3月11日にクリスティーズでビープル(Beeple、本名はマイク・ウィンケルマン)の作品《Everydays: The First 5000 Days(エブリデイズ:最初の5000日)》が6900万ドルで落札されて以来、https://artnewsjapan.com/tag/nftNFT(非代替性トークン)の熱心なコレクターたちが台頭してきている。

2021年3月に6900万ドルで落札されたビープルの作品《Everydays: The First 5000 Days(エブリデイズ:最初の5000日)》 Christie's Images Ltd. 2022
2021年3月に6900万ドルで落札されたビープルの作品《Everydays: The First 5000 Days(エブリデイズ:最初の5000日)》 Christie's Images Ltd. 2022

オンラインで販売されたこのデジタル作品が記録的な売却額になったことで、ビープルデビッド・ホックニージェフ・クーンズに次いで、作品の値段が3番目に高い存命中のアーティストとなった。

謎に包まれていた買い手は、シンガポールを拠点とする暗号資産投資家のビグネシュ・スンダレサン氏であることがすぐに明らかになった。32歳の起業家で、Metapurse(メタパース)というNFTプロジェクトの創設者でもあるこの人物は、メタコヴァンという名でオークションに参加し、中国のIT長者ジャスティン・サン氏を抑えて《Everydays》の落札に成功した。サン氏は僅差(きんさ)で敗れたことをツイッターで発表している。

だが、この敗北によってサン氏の美術品収集熱は冷めることがなかった。暗号資産プラットフォームTRONの創業者である30歳のサン氏は、一流美術品の取得を目的としたNFT投資ファンドを立ち上げ、そのファンドを通して美術史に残る名作のNFTを手に入れた。

2021年3月23日にロンドンのクリスティーズで行われた近現代美術のオークションで、ピカソの《首飾りをつけて横たわる裸婦(マリー・テレーズ)》(1932)とウォーホルの《Three Self-Portraits(三つの自画像)》(1986)を落札。その後、Pakというアーティストのデジタル作品群 《The Fungible Collection(代替可能なコレクション)》から複数のNFTも手に入れている。

《Everydays》の落札が世界に衝撃を与える直前の2月には、デジタルアートの販売プラットフォーム、Nifty Gateway(ニフティ・ゲートウェイ)でビープルによる別の作品が660万ドルで売れている。出品者は、マイアミを拠点とする32歳のアートコレクターでブロックチェーン愛好家のパブロ・ロドリゲス=フレイル。彼は、この10秒間の動画作品(NFTとして登録されている)を2020年10月に6万7000ドルで購入していた。

NFTブームはアートの世界だけにとどまらない。昨年10月、米プロバスケットボールリーグのNBAはNFTコレクションのためのオンライン・プラットフォーム、Top Shot(トップショット)を立ち上げた。ここでは、NFT化された試合のハイライト動画をトレーディングカードのように売買したり、収集したりできる。

デジタル作品の収集にはまた、スポーツ業界の著名人も参入している。スポーツ賭博企業DraftKings(ドラフトキングズ)の大株主であるシャローム・メッケンジー氏は、今年の5月にサザビーズで、最も初期のNFTマーケットプレイスであるクリプトパンクス(CryptoPunks)のデジタル・キャラクターを1140万ドルで購入した。(翻訳:野澤朋代)

※本記事は、米国版ARTnewsに2021年10月13日に掲載されました。元記事はこちら

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