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イタリア文化省がアメリカから返還された約25億円相当の略奪美術品を公開

イタリア文化省は、アメリカ当局が昨年返還した1900万ドル(約25億円)相当の略奪美術品を公開した。これらの中には、ニューヨークのメトロポリタン美術館から返された27点も含まれる。

アメリカからイタリアに返還された、1900万ドル(約25億円)相当にもなる略奪美術品の一部。Photo: Emanuele Antonio Minerva/ Italian Ministry of Culture

イタリア文化省が発表したのは、昨年7月から9月にかけてニューヨーク郡地方検事局から返還された60点の古美術品のうちの57点で、その約半数がメトロポリタン美術館から押収されたものということになる。返還品は大理石の胸像、コリント式の兜3点、複雑な絵の描かれた陶器、ベスビオ山の噴火にも耐えたフレスコ画、ブロンズの皿や彫刻などで、二重螺旋のブローチは紀元前1100年から1400年のものと推定される。

また、イタリア中央部の神殿から略奪された紀元前200年の「女神アテナの大理石像の頭部」や、紀元前470年の「カイリックス」と呼ばれる酒杯は、合わせて120万ドル(約1.5億円)もの価値があるという。いずれも、昨年メトロポリタン美術館から押収された27点の略奪品とされる美術品の一部だ。

今週ローマで開かれた記者会見で、カラビニエリ(国家治安警察隊)の美術部門責任者であるB. Vincenzo Molineseは、送還された60点のうち3点は非常に壊れやすく、輸送や展示に向かなかったため、今回の発表からは除外したと説明した。また、これら60点の価値を算出するのは難しいとも述べている。

「私たちイタリア人にとって、これらの美術品の価値はすなわち、私たちの歴史的、文化的アイデンティティの価値であり、値段をつけることはできません」とMolineseは語り、今後、これらはイタリアの国公立美術館へ巡回する可能性があると付け加えた。

NYマンハッタン地区のアルビン・ブラッグ地方検事は昨年7月の声明で、「これらの芸術品は祖国での展示に値する」と述べ、イタリアにとっての文化的価値は「計り知れない」と続けた。

この返還の背景には、イタリアの文化財保護団体(TPC)による広範囲な調査がある。TPCによると、これら美術品は、アートブローカーのジャコモ・メディチ、ジョバンニ・フランコ・ベッキナ、パスカーレ・カメラ、エドアルド・アルマギアが入手し、最終的に、アメリカの博物館やギャラリー、プライベートアートコレクションに売却された。4人のブローカーは入手した美術品を億万長者の美術商、マイケル・スタインハートに売却しているが、彼の膨大な古美術品コレクションは、1990年代にはすでに当局の調査を受けていた。

スタインハートは、数十年に及ぶ収集歴の中で、購入したものの中には盗まれたと思われる100以上の品が含まれることを認めていたにもかかわらず、罪に問われることはなかった。しかしその後2021年末までに、スタンハートはコレクションのうち180点をマンハッタン地方検事局に引き渡し、今後「生涯に渡り古美術品を取引しない」ことに同意していた。このような同意は前代未聞であるとして、2021年当時も大きく報道されている。

今回のローマでの記者会見には、イタリア文化相ジェンナーロ・サンジュリアーノ、マンハッタン地区検事局副検事マシュー・ボグダノス、ローマ裁判所共和国副検事アンジェラントニオ・ラカネリ、ローマ米国大使館広報担当大臣参事官クリスティーナ・トムリンソン、文化省考古学者官フェデリカ・ピッツアリスも出席した。

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