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紀元前3000年の石像の所有権をイエメンに返還。METと同国の「歴史的」パートナーシップ

メトロポリタン美術館は、紀元前3千年紀に作られた2個の石製遺物の所有権をイエメンに返還するが、引き続き同美術館に貸し出されることが決まった。

メトロポリタン美術館が1998年に購入した砂岩の女性立像。Photo: Courtesy of The Metropolitan Museum of Art

所有権が返還されたのは、大理石で出来た長方形のすり鉢と、女性の立像だ。メトロポリタン美術館は2023年5月、所蔵品の中で由来が不明であるものを調査するため、4人の専門家を雇った。その結果、この2点が1984年にイエメンの都市マリブ近郊で発掘されたものであることが突き止められた。

プレスリリースによると、美術館は1998年にストラップとネックレスをつけた砂岩の女性立像を購入し、1999年に長方形の大理石のすり鉢を寄贈されている。

しかし、モハメド・アル=ハドラミ駐米イエメン共和国大使は声明で、「現在のイエメン情勢により、これらの遺物を祖国に返すのは適切な時期ではありません」と述べている。

2つの遺物は、メトロポリタン美術館とイエメンの契約に基づき、同国が返還を望むまで博物館が管理・展示することになる。この協定は、2023年初めにイエメンがスミソニアンの国立アジア美術館と結んだものに始まり、続いてロンドンヴィクトリア&アルバート(V&A)美術館との間で結ばれた、彫刻が施された古代の葬儀用石碑4点の協定にも類似している。

9月21日、ムハンマド・アル=ハドラミ大使とティム・レンダーキング米国特使は、メトロポリタン美術館のマックス・ホレイン館長兼CEOとともに式典に出席し、正式に保管契約を結んだ。

ホレイン館長は、メトロポリタン美術館とイエメン共和国とのパートナーシップは 「歴史的 」であるとしながら、次のようにコメントした。

「これらの魅力的な品々を展示することは、メトロポリタン美術館の5000年にわたるコレクションと対話しながら、イエメンの文化を観客に紹介する重要な機会となっています。私たちは、これらの重要な作品にスポットライトを当てるという、協力的で真摯な取り組みができたことに感謝しています。ニューヨークの大規模なイエメン系アメリカ人コミュニティと協力して、この秋以降に私たちの新しいコラボレーションの祭典を開催することを楽しみにしています」

今回の動きは、メトロポリタン美術館のコレクションに対する由来の見直しが強化された結果、マンハッタン地区検事局による複数の押収が行われ、ネパール、ギリシャ、イタリア、エジプト、ナイジェリアなどの国々への返還につながった一連の出来事に続いている。その他の同館と古代遺物にまつわる事件としては、古代マヤの王座が展示のために違法に輸出されたという先住民コミュニティからの抗議や、1000点以上の品物が有罪判決を受けた人物からの売買によって取得されていたことが判明した出来事などがある。(翻訳:編集部)

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