世界最古の設計図!? 狩猟用の大規模構造物を記した石板は「驚くほどリアルで正確」
サウジアラビアとヨルダンでの考古学調査で、9000年以上前にさかのぼる世界最古の狩猟用構造物の設計図を記した石板が発見された。
科学ジャーナルPLOS Oneに掲載された新しい研究報告によると、見つかった石板には、石器時代の狩猟用の仕掛けの形状が「極めて正確に」刻まれていた。この仕掛けは、その形からデザートカイト(砂漠の凧)と呼ばれ、野生動物を石積みの囲いの中に追い込んで狩りをするのに使われたと考えられている。
壁で囲まれた誘導路と囲い場で構成されるこの仕掛けの大きさは、数十メートルから数キロメートルにおよび、囲い場には深さ4メートル近い穴がいくつも掘られている。
中東やアジアでは、この種の構造物が6000以上見つかっており、特に現在のサウジアラビア、シリア南部、ヨルダン東部に集中している。初めて発見されたのは1920年代のことで、航空機のパイロットが砂漠に何か構造物のようなものがあると気づいたことからその存在が明らかになった。しかし、この大規模な狩猟用の仕掛けに関する研究は、数えるほどしか発表されていない。
2015年にはサウジアラビアとヨルダンで、デザートカイトの形を刻んだ2つの石板が発見された。ヨルダンのジベル・アル・ハシャビヤ付近の集落には、8つのデザートカイトがあったとされ、80センチメートルほどの石板は約7000年前のものと見られている。一方、サウジアラビアのジェベル・アッ・ジリヤ地域で見つかった石板は、長さ約4メートルの大型のものだ。約8000年前のものと推定されるこの石板には、120メートルの距離に2つのデザートカイトがあったことが記されている。
考古学研究者による分析の結果、石板に記された図の形状、配置、比率が実際のデザートカイトの遺構と一致することが判明した。ヨルダンのデザートカイトは計画図の425倍、サウジアラビアは175倍の大きさで、方位も正確に再現されている。これについて研究報告には、「石板に刻まれた図は驚くほどリアルで正確であり、しかも縮尺どおりだ」と書かれている。ただし、囲い場の穴は単なる丸が刻まれているだけで、縮尺どおりの深さには彫られていない。
このデザートカイトは建設当時、人類史上最大級の建造物だったと考えられる。石板の設計図からは、大規模な狩猟用の仕掛けを作り、使っていた人々の空間認識能力の高さがうかがえる。また、巨大なデザートカイトの建設は、一度に多くの動物を狩るために地域社会が一致協力して取り組んでいたことを示している。(翻訳:石井佳子)
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