ジェフ・クーンズの木彫は約5億円。NYの著名コレクターがオークションで総売上42億円を叩き出す
3月9日、ニューヨークのクリスティーズで、美術品コレクターでギャラリストのアダム・リンデマンのコレクションのオークションが行われた。出品された37点の多くが予想落札額を大きく上回り、総額約3150万ドル(約42億円)を売り上げた。
リンデマンはニューヨークに2店舗構えるギャラリー、Venus Over Manhattanのオーナー。2006年に出版された『Collecting Contemporary Art』の著者でもあり、ニューヨーク・オブザーバー紙で4年間アートコラムを執筆していた。
有名人であるリンデマンのオークションは、「ADAM: Works from the Collection of Adam Lindemann」と彼の名を冠したタイトルが付けられた。今回のオークションがさまざまな観点で異例であったのは、出品の背景にコレクターの死や離婚、借金(これらはオークションへの出品理由の代表格だ)といったものがなく、出品作品の多くが存命アーティストによるものであったことが大きい。
イブニングセールでは、ジェフ・クーンズ、アンディ・ウォーホルのほか、Jim Nutt、Etel Adnan、Karen Kilimnik、Jean Royèreの作品、1974年製ドゥカティのバイク、デジタルアーティストであるビープルの歌手マドンナのNFTが出品された。
この売却益の一部は、メトロポリタン美術館がサハラ以南のアフリカ、オセアニア、古代アメリカ大陸の作品を展示しているマイケル・C・ロックフェラー翼の改修に充てられる予定だ。リンデマンは同館の運営委員会の代表を務めており、ニューヨーク・タイムズ紙のインタビューでは寄贈額について、100万ドル以上の数字を明言することは避けた。
リンデマンはニューヨーク・タイムズの取材に対し、「私はアフリカ、オセアニア、プレ・コロンビアのアートが大好きで、ずっと勉強してきました。私が初めて買った素晴らしい芸術作品は、フランスのアーティストでコレクターのアルマンによる牙のものでした」
今回のオークションの高額落札作品は、アレクサンダー・カルダーの音叉型モビール《Black Disc with Flags》546万ドル(約7億円)、ジャン・ロワイエールのソファとペアアームチェア《Ours Polaire》342万ドル(約4億円)、アンディ・ウォーホルのサイン入りシルクスクリーン《Little Electric Chair》450万ドル(約6億円)、ダミアン・ハーストの「Pharmacy」シリーズから《The Sleep of Reason》(2004)220万ドル(3億円)、ジェフ・クーンズの木製彫刻《Ushering in Banality》390万ドル(約5億円)。
リンデマンは作品を入手後、はるかに高い価格で売却することでも知られている。2004年に450万ドル(約4億9000万円)で購入したジャン=ミシェル・バスキアの1982年の油彩を、2016年にクリスティーズで5730万ドル(約61億円)で売却したほか、2003年にサザビーズでジェフ・クーンズの《Hanging Heart (Magenta/Gold) 》を120万ドル(約1億4000万円)で購入後、2350万ドル(現在のレートで約31億円)で売却している。(翻訳:編集部)
from ARTnews