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骨董品店にあったシャンデリアがジャコメッティ作と判明! オークションに出品される

わずかな金額で購入した品物が、一流の芸術家の作品だった──骨董品店巡りが趣味なら誰もが憧れるストーリーだ。1960年代、ロンドンの骨董品店で250ポンド(130万円相当)で購入したシャンデリアが、スイスの彫刻家、アルベルト・ジャコメッティ(1901-66)が制作したものであることが、50年後に判明した。

アルベルト・ジャコメッティ(1966年撮影)。Photo: Gisere Freund/Photo Researchers HistoryI/Getty Images

1940年代に作られたこのシャンデリアは、来月クリスティーズに出品予定だ。クリスティーズは、2018年におよそ930万ドル(約10億円)で落札された同様の作品よりも金額が上回る可能性があると話す。

削った岩のような肌をした、細長い人物が特徴的なジャコメッティの彫刻は、現在のアート市場で最も高価な作品の一つである。1947年のブロンズ作品《L'Homme au Doigt》は2015年に1億4130万ドル(約170億円)で落札され、オークションに出品された彫刻の中で最高額を記録している。

ジャコメッティは収入を得る手段として、1929年から弟のディエゴとともに装飾品や家具を制作しており、「装飾品は彫刻に劣らず興味があり、その2つには共通点がある」と語っている。中でも、当時最も影響力のあったインテリアデザイナー、ジャン=ミシェル・フランクとのコラボレーション作品は人気があり、「ヴォーグ」や「ハーパーズ・バザー」誌にもたびたび取り上げられた。ジャコメッティ財団によると、彼の装飾作品の半分以上は、フロアランプ、燭台などの照明であったという。

ガーディアン紙によると、今回クリスティーズに出品されるシャンデリアは、ジャコメッティの亡き友人でアートコレクターのピーター・ワトソンが1946年か1947年に注文したものだという。 作品は、今はなきイギリスの文化雑誌「Horizon」のオフィスに1949年から休刊する翌年まで飾られていた。その後倉庫に保管され、ロンドンのメリルボーン通りにある骨董品店に不思議な経路で辿り着いたのだ。

1960年代にイギリスの画家ジョン・クラクストンがこの店から購入し、50年間、ロンドンのハムステッドにある自宅に飾っていた。2021年、パリのジャコメッティ財団に作品鑑定を依頼したところ、ジャコメッティの初期の彫刻作品《La Boule suspendue》(1922)にしか登場しないボールが吊り下げられていることから、彼のデザイン作品の中でも、最も重要なものであるということが判明した。(翻訳:編集部)

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