ザブルドヴィッチ夫妻のコレクションが競売に。ガストン作品が高額落札も、総額は予想を下回る

クリスティーズ・ロンドンのイブニングセールで、ザブルドヴィッチ夫妻のコレクションが予想を下回る結果となった。売却に踏み切った背景をめぐっては、夫妻とアート界の一部との軋轢も指摘されている。

フィリップ・ガストンの《Mirror Head》(1977)が競売にかけられる様子。Photo: Guy Bell, Christie's Images Ltd. 2026
フィリップ・ガストンの《Mirror Head》(1977)が競売にかけられる様子。Photo: Guy Bell, Christie's Images Ltd. 2026

6月25日にクリスティーズ・ロンドンで開かれたイブニングセールは、やや落ち着いた空気のなかで進行した。この日のセールは2部構成で、前半にはフィンランド出身の実業家であるアニタ&ポジュ・ザブルドヴィッチ夫妻のコレクションから現代アート56点、後半には戦後および現代アート79点が出品された。総売上高は2570万ポンド(約54億8570万円)で、前半が1550万ポンド(約33億1000万円)、後半が1020万ポンド(約21億7750万円)だった。

ガストン作品が最高額も、売上は伸び悩む

ザブルドヴィッチ・コレクションの総予想落札額は1260万〜1930万ポンド(約26億9000万〜41億2130万円)とされていたが、実際の落札額は1230万ポンド(約26億2665万円)と予想下限をわずかに下回り、手数料を含めると1540万ポンド(約32億8865万円)となった。出品作のうち7点には最低価格保証がついていたが、3点が取り下げられ、7点には買い手がつかず、落札率は89%だった。なお、アンジ・スミス(Anj Smith)、ローズ・ワイリー(Rose Wylie)、ヤコブ・ジュリアン・ジオルコフスキ(Jakub Julian Ziolkowski)の3人は自身のオークション記録を更新している。

ザブルドヴィッチ・コレクションの出品群で最も高額となったのは、フィリップ・ガストンの《Mirror Head》(1977)だった。本作は予想最低落札価格の350万ポンド(約7億4670万円)を上回る400万ポンド(約8億5330万円)弱で落札され、同コレクションの売上高の約3分の1を占めた。これに続いたのは、予想を上回るおよそ160万ポンド(約3億4130万円)で落札されたリチャード・プリンスの《Untitled (Cowboy)》(1994)だった。マーク・ブラッドフォードのミクストメディア作品《Farther South and Elsewhere》(2015)は約130万ポンド(約2億7730万円)、横幅約3メートルのラシード・ジョンソンの《Untitled Broken Crowd》(2021)は95万2500ポンド(約2億320万円)で落札された。US版ARTnewsが毎年発表する「TOP 200 COLLECTORS」の常連として知られるザブルドヴィッチ夫妻のコレクションながら、100万ポンド(約2億1330万円)を超えた作品は3点にとどまっている。

フィリップ・ガストン《Mirror Head》(1977)

Artnet Newsは、今回の売却について、注目度の高いコレクション放出でしばしば語られる「3つのD」には当てはまらないと指摘している。夫妻は現在も婚姻関係にあり、死去(Death)や離婚(Divorce)、債務(Debt)のいずれにも該当しない。そのため、軟調な市場環境のなかでなぜ売却に踏み切ったのか、関係者の間で疑問の声も上がっていた。情報筋がArtnet Newsに語ったところによれば、その背景には、ザブルドヴィッチ家とイスラエルとのつながりをめぐり、同家と美術界の一部との間に長年続いてきた緊張があったという(夫のポジュ・ザブルドヴィッチはイスラエルへの支持を示しているほか、軍用機サービス会社に出資していることでも知られている)。また同メディアは、夫妻が1994年から収集を始め、約600人のアーティストによる約8000点の作品を所有していたとも伝えている。

後半のオークションも予想に届かず

後半のオークションは、総予想落札額が860万〜1210万ポンド(約18億3440万〜25億8100万円)とされていた。しかし、最終的な落札額は810万ポンド(約17億2770万円)で、手数料込みでも1020万ポンド(約21億7570万円)にとどまり、落札率も81%だった。ヴァネッサ・ロウ(Vanessa Raw)は2万5400ポンド(約540万円)で自身のオークション記録を更新している。

このオークションで最高額となったのは、セシリー・ブラウンの横幅約2.7メートルに及ぶ絵画《The Haunter》(2010)だった。最低価格保証がついていたこの作品は、1分強の競り合いの末、予想下限の220万ポンド(約4億7000万円)をわずかに上回る225万ポンド(約4億8000万円)で落札された。

810万ポンド(約17億2770万円)で落札されたセシリー・ブラウンの《The Haunter》(2010)。

この部門で次に高値をつけたのは、アンディ・ウォーホルの《Jackie》(1964)だった。短い入札の応酬を経て、予想下限を少し上回る42万ポンド(約8960万円)、手数料込みで53万3400ポンド(約1億1400万円)で落札された。このほか、ギュンター・ユッカー、アントニー・ゴームリージュリアン・シュナーベルダミアン・ハーストらの作品も上位落札作に並んだ。

ホックニーとクーンズにも注目

また、6月11日に88歳で逝去したデイヴィッド・ホックニーの作品にも入札が集まった。iPadで制作したドローイングをもとにしたプリント作品《The Arrival of Spring in Woldgate, East Yorkshire in 2011 (twenty eleven) – 30 April》(2011)は、15万ポンド(約3200万円)の予想上限を大きく上回り、22万ポンド(約4700万円)、手数料込みで27万9400ポンド(約5960万円)で落札されている。

この夜の最後のロットは、ジェフ・クーンズと前妻で元ポルノスターのイローナ・スタラーとの性行為を描いた作品《Dirty – Jeff On Top》(1991)だった。本作は13万9700ポンド(約2980万円)で落札され、ハンマーを振り下ろしたオークショニアは、会場に向けて「実に刺激的なフィナーレですね」とコメントし、セールを締めくくった。(翻訳:編集部)

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