イタリア国立21世紀美術館(MAXXI)のサステナビリティ推進に、政府が約20億円を助成
イタリア政府は、ローマにある現代美術館、イタリア国立21世紀美術館(MAXXI)の持続可能性実現と調査研究拠点の新設計画に、1500万ユーロ(約20億円)を投じる。この助成金は、国内の38の文化資産に対し、2億ユーロ(約262億円)の資金を配分するプログラムの一環として発表された。
2月10日、イタリアのダリオ・フランチェスキーニ文化相は、MAXXI財団のジョバンナ・メランドリ理事長やイタリア政府関係者とともに、ローマのフラミニオ地区にあるMAXXIで新プロジェクトの記者発表を行った。「Grande Maxxi(グランデ・マキシ)」と呼ばれるこの構想では、同美術館をよりエネルギー効率が高いものに改築すると同時に、さまざまな機能を持つ調査研究センターを新設する予定。現在、イタリア政府は設計案を募集している。
フランチェスキーニ文化相は声明の中で、「わが国では長い間、現代アートやクリエイティブ産業が二の次にされてきた」と述べ、新しい計画を「持続可能なプロジェクトであり、現代アートや研究、イノベーションへの投資」だとしている。
ザハ・ハディドが設計したMAXXIは、イタリア初の現代アート専門の国立美術館として2010年にオープン。しかし、これまで政府の財政難により、閉鎖の危機に直面したこともある。
今回のプロジェクトでは、ローマやナポリの史跡にも多額の資金が投入される。ナポリ王宮は2300万ユーロ(約30億円)と、今回対象となる38の文化資産の中で最も多い金額を獲得。また、19世紀に作られたローマの有名な「鉄の橋」は、2021年10月の火災で被害を受けたが、その修復に1400万ユーロ(約18億円)が充てられる計画だ。
このほかにも、修復が必要な歴史建造物などに資金が配分される。たとえば、モンテルーポ・フィオレンティーノにあるメディチ家の別荘、ヴィラ・デル・アンブロジアーナや、シエナの古代病院、マルケ州の宗教施設などに700万〜1400万ユーロ(約9億~18億円)が割り当てられた。
さらに、総額1280万ユーロ(約17億円)をかけて、三つの文化資産を国が購入することが承認された。そのうちの二つはローマにある歴史的な別荘で、三つ目はアルティーノ遺跡と関連があるとされるヴェネチア近郊の土地だ。
声明の中でフランチェスキーニ文化相は、文化分野への投資は、国の経済的、社会的成長をうながす中心的役割を担うものとし、今回選ばれたうち16カ所の文化資産に配分された国の助成金は、イタリアの「地域競争力」向上への継続的な取り組みをあと押しするものだと述べている。(翻訳:野澤朋代)
※本記事は、米国版ARTnewsに2022年2月11日に掲載されました。元記事はこちら。