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今週末に見たいアートイベントTOP5: 伝説的アーティストの15年ぶり個展「90's and : /or 20's」、松山智一が共同キュレーション「ながくとも四十に足らぬほどにて~」ほか

関東地方の美術館・ギャラリーを中心に、現在開催されている展覧会の中でも特におすすめの展示をピックアップ! アートな週末を楽しもう!

さばかれえぬ私へ Tokyo Contemporary Art Award 2021-2023 受賞記念展(東京都現代美術館)より、竹内公太《シューティング(コールドクリーク)》(2022)

1. 跳躍するつくり手たち:人と自然の未来を見つめるアート、デザイン、テクノロジー(京都市京セラ美術館)

TAKT PROJECT 京都市京セラ美術館 特別展「跳躍するつくり手たち:人と自然の未来を見つめるアート、デザイン、テクノロジー」展示風景 Photo: 来田猛

ジャンルを超え、独自の視点で「現在」を表現する20作家を紹介

地球環境への意識が高まり、日進月歩でテクノロジーが進化する現代は、人類の活動が地球に大きな影響を及ぼす時代と言われている。本展は、デザインを軸としてリサーチと思索を重ねてきた、武蔵野美術⼤学客員教授の川上典李⼦が企画・監修を担当。人間や地球の歴史を意識しながら、柔軟な発想でめざましい活動を展開する日本のアート、デザイン分野の1970年代、80年代生まれを中心とした20作家を紹介する。

主な作家は、東京藝術大学大学院で学んだ鋳金の技術を発展させて作り上げた、超極薄のアルミニウムの花で動物などの立体作品を制作する髙橋賢悟、同大学院の彫刻専攻を修了後、曹洞宗大本山永平寺で修行を経て僧侶となり「宗教性」や「信仰心」をテーマに制作する長谷川寛示、手法やジャンルにとらわれず、不確かな現実世界を実感に引き寄せようとする現代アートチーム目[mé]。ほか出品作家は、石塚源太、井上隆夫、岩崎貴宏、A-POC ABLE ISSEY MIYAKE、GO ON、佐野文彦、TAKT PROJECT、田上真也、田村奈穂、津守秀憲、中川周士、西中千人、長谷川 絢、林響太朗、細尾真孝+平川紀道+巴山竜来、八木隆裕+石橋 素・柳澤知明/ライゾマティクス+三田真一、横山隆平。

跳躍するつくり手たち:人と自然の未来を見つめるアート、デザイン、テクノロジー
会期:3月9日(木)~6月4日(日)
会場:京都市京セラ美術館(京都府京都市左京区岡崎円勝寺町124)
時間:10:00 ~ 18:00 (入場は30分前まで)


2. ながくとも四十に足らぬほどにて死なんこそめやすかるべけれ(Die Young, Stay Pretty)(KOTARO NUKAGA)

展示風景

カルロス・ロロンと松山智一が共同キュレーション。非西洋の文脈からの「美」に向き合う

プエルトリコにルーツを持ち、帰属意識や文化的アイデンティティをテーマにシカゴで活動するアーティスト、カルロス・ロロンと、ニューヨークを拠点にリアリティをもった時代性を表現言語として活躍するアーティスト、松山智一の共同キュレーションによる展覧会。現在、芸術の世界で重要なテーマとなっている「ポストコロニアル」、そして非西洋の文脈から生まれる美学による「美」に向き合うという共通項を持つ2人が対話を重ねて生まれた本展は、大文字の「美術史」を語る「美学」に対して批評的な視点で捉え、一石を投じる構成となっている。

本展は、ファッション業界において商品化され、消費される性と身体を通して「美」というものについて批判的な視点に立ち、問題意識を共有するマリリン・ミンター、現代の人物像の奇妙さを、あらゆる美術史的参照を基にした折衷的なオブジェクト、ドローイングなどで表現してきた、パキスタンをルーツとするフーマ・ババなど9作家の作品を展示する。ほか出品作家は、セイヤー・ゴメス、カンディダ・ヘーファー、桑田卓郎、ジョエル・メスラー、エルヴィン・ヴルム、カルロス・ロロン、松山 智一。

ながくとも四十に足らぬほどにて死なんこそめやすかるべけれ(Die Young, Stay Pretty)
会期:3月10日(金)~4月28日(金)
会場:KOTARO NUKAGA(東京都港区六本木6-6-9 ピラミデビル2F)
時間:11:00 ~ 18:00 


3. 90's and : /or 20's(PARCEL/parcel)

《A Step I”》(2023) ©Taro Chiezo 2023 All rights reserved

ネオ・ポップムーヴメントを率いた伝説的アーティスト、15年ぶりの個展

1990年代から、奈良美智村上隆とともにネオ・ポップムーヴメントの中⼼⼈物として活躍してきた太郎千恵藏の、東京では15年ぶりとなる個展。太郎は、80 年代にニューヨーク⼤学ティッシュ・スクール・オブ・アートで学び、アンディ・ウォーホルバスキアが活躍するニューヨークのアートシーンに遭遇。91年にニューヨークのレンパイア・ギャラリーで初個展を開催して以来、欧米や国内のギャラリー・美術館で作品を発表してきた。94年から古典絵画をバックグラウンドに、アニメや特撮のモチーフを取り⼊れた絵画の制作を開始。その後マンガをモチーフとしたペインティングへと発展していった。

2会場で開催される本展は、新作のペンギンをモチーフにした絵画に加え、⽇本初公開となる《War / Pink is color of Blood》(1996)や、2009 年に開催された岡本太郎美術館での展覧会「TARO VS TARO」で展⽰された《Father and Son III》(1999)、セーラームーンをモチーフにした《Powerful Girl I》 (1994)など、90 年代の絵画を展⽰する。

90's and : /or 20's
会期:3月18日(土)~4月30日(日)
会場:PARCEL(東京都中央区日本橋馬喰町2-2-1 DDD hotel内 1F)、parcel(中央区日本橋馬喰町2-2-14 まるかビル 2F)
時間:14:00 ~ 19:00 


4. 憧憬の地 ブルターニュ ―モネ、ゴーガン、黒田清輝らが見た異郷(国立西洋美術館)

ポール・ゴーガン 《ブルターニュの農婦たち》(1894) 油彩、カンヴァス 66.5×92.7cm オルセー美術館(パリ) ⒸRMN-Grand Palais (musée d'Orsay) / Hervé Lewandowski / distributed by AMF

フランスの「異郷」、ブルターニュ地方が巨匠たちに与えた影響を探る

フランス北西部のブルターニュ地方は、古来より特異な歴史文化を紡いできた。このフランスの内なる「異郷」は、ロマン主義の時代を迎えると芸術家たちの注目を集め、新たな画題を求める画家たちがブルターニュを目指した。19 世紀末にはポール・ゴーガンを取りまくポン=タヴァン派やナビ派といった美術史上重要な画家グループ誕生のきっかけにもなった。

本展では、多くの画家たちがブルターニュに惹きつけられた 19 世紀後半から 20 世紀はじめに着目し、国内の 30 カ所を超える所蔵先と海外2館から集められたゴーガン、モネミュシャら約 160 点の絵画や素描、版画などで、それぞれの画家たちがこの「異郷」になにを求め、見出したのかを探る。また、明治後期および大正期にかけて渡仏し、ブルターニュにまで足を延ばした黒田清輝、山本鼎ら日本出身画家たちの足跡と作品にも光をあてる。

憧憬の地 ブルターニュ ―モネ、ゴーガン、黒田清輝らが見た異郷
会期:3月18日(土)~6月11日(日)
会場:国立西洋美術館(東京都台東区上野公園 7-7)
時間:9:30 ~ 17:30(金・土曜は~20:00、入場は30分前まで)


5. さばかれえぬ私へ Tokyo Contemporary Art Award 2021-2023 受賞記念展(東京都現代美術館)

志賀理江子《バイポーラー》よりスチル画像 (2022)

被災地を拠点にする受賞者2人が見つめる、震災復興と現在

東京都とトーキョーアーツアンドスペース(TOKAS)が中堅アーティスト支援を目的に実施する美術賞「Tokyo Contemporary Art Award(TCAA)」。3回目は、志賀理江子、竹内公太が選ばれた。本展は、東日本大震災の爪痕が大きく残された宮城、福島を拠点とする受賞者2人が対話を重ね、共通認識を持ちつつ互いの作品が重なり合うような展示空間を構成する。

志賀は映像による新作を中心に、2011 年の被災後から突如始まった復興計画に圧倒された経験を捉え直した。東京から三陸、青森までの沿岸部の地図を土台とし、写真や絵、メモなどが混在する大型のコラージュなど、震災後、刻々と変化し続ける自身の思考も含めて可視化することを試みる。竹内は、リサーチを重ねた第2次世界大戦末期の日本軍の兵器「風船爆弾」について、米国で風船が落ちた地面の写真を用いた実寸大の風船による新作インスタレーションを発表。また、東日本大震災の余波により、保存が叶わなかったいわき市の劇場「三凾座(みはこざ)」が解体される様を作品とした《三凾座の解体》(2013)と合わせて展示する。

さばかれえぬ私へ Tokyo Contemporary Art Award 2021-2023 受賞記念展
会期:3月18日(土)~6月18日(日)
会場:東京都現代美術館 企画展示室 3F(東京都江東区三好 4-1-1)
時間:10:00 ~ 18:00 

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