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2021年のアメリカ芸術・文化産業のGDPに占める割合が過去最高に。しかし、コロナ禍からの完全回復には至らず

アメリカ政府が新たに発表した報告書によると、2021年の芸術・文化分野の経済規模は1兆ドル(現在の為替レートで約132兆円)に達し、国内総生産(GDP)に占める割合が過去最高を記録した。

ニューヨーク近代美術館(MoMA)のエントランス。Photo: George Rose/Getty Images

3月15日、アメリカの国立芸術基金(NEA)と経済分析局(BEA)は、芸術・文化分野における35の業種の健全性に関する最新の年次報告書を発表した。今回、特に重点が置かれたのは、各業種が新型コロナウィルスによるパンデミック以前の水準に戻ったかどうかの分析だ。

報告書によると、2021年の芸術・文化分野の経済規模は2020年比で13.7%増。これは同時期の全体の増加率5.9%を大きく上回るもので、2021年に芸術・文化分野が国内総生産(GDP)に占める割合は4.4%となった。

調査対象となった35業種のうち、インディペンデント・パフォーマーやアーティスト、舞台芸術関連団体など10業種については、2021年に高い成長率を記録したものの、2019年の規模に戻った業種はなかった。

また、NEAの報告によると、2021年の芸術分野における雇用者数は490万人弱。コロナ禍の影響で世界的にこの分野の経済活動が縮小した2020年を上回ってはいるものの、2019年の520万人ほどには回復していない。

2020年に最も大きな打撃を受けた舞台芸術従事者と舞台芸術施設の従業員数は、2021年に合計約23万人で前年比14%増。しかし、ここでもコロナ禍以前の雇用者数32.3万人を下回っている。

ただし、この数字は芸術団体に在籍する者のみを対象としていることに、報告書は注意を促している。一部の業種で雇用が減少しているのは、この時期にフリーランスや契約社員への依存度が高まったためと考えられる。芸術産業では歴史的に、自営業者の割合が他産業と比べて高いことが特徴だ。

NEAのマリア・ロザリオ・ジャクソン委員長は、声明で次のように述べている。

「NEAとBEAによる年次報告書は、芸術・文化がアメリカ経済の中で非常に重要な位置を占めていることを明示しています。しかし、この分野はコロナ禍による打撃からまだ立ち直っていません。報告書では非営利団体と営利団体の経済活動に関するデータをまとめていますが、芸術・文化分野の活気と成長に両者がそれぞれ貢献しているのを認識することが重要です」(翻訳:石井佳子)

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