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今週末に見たいアートイベントTOP5: VR技術で風景画を描く、注目の若手作家「エマ・ウェブスター」展、イサム・ノグチ作の石庭に3作品を発表「ケリス・ウィン・エヴァンス 」

関東地方の美術館・ギャラリーを中心に、現在開催されている展覧会の中でも特におすすめの展示をピックアップ! アートな週末を楽しもう!

「Before/After」展(広島市現代美術館)より、シリン・ネシャット《Land of Dreams》(2019) Courtesy of the artist and Gladstone Gallery (c) Shirin Neshat

1. エマ・ウェブスター「The Dolmens」(ペロタン東京)

Emma Webster. A Day A Night another Day, 2023. Oil on linen 213.4 × 152.4 × 2.5 cm | 60 × 84 × 1 in. Photo: Marten Elder. Courtesy of Perrotin and the artist.

二次元と三次元を自在に行き来する米国の画家が日本初個展

遠近法によって対象物を二次元に表してきた絵画の長い歴史を経てたどり着いた現代。バーチャルリアリティ(VR)技術によって二次元と三次元を自在に行き来するのが、アメリカの画家エマ・ウェブスターだ。1989年に生まれ、名門スタンフォード大学やイェール大学(美術学修士号)で学んだ若き才能が、日本で初個展を開く。

鑑賞者を異世界に引き込むような風景画を描くウェブスター。その画法は、スケッチをVRのプログラムに取り込み、舞台照明のような明暗や誇張などを加えてドラマチックに変容させることで、新たな自然の情景を創り出すというもの。さらにそれを再びキャンバスに油彩画として創作し直し、三次元から二次元へと還元する。展覧会名の「The Dolmens」は、複数の石の上に平たい巨石を渡した墓「支石墓」を意味する。今回発表する新作ドローイングとペインティングは、反復的な構図を思わせる展覧会場の建築からインスピレーションを受けて制作。支石墓のように閉ざされた空間を、視覚的に探究したという。

エマ・ウェブスター「The Dolmens」
会期:3月8日(水)~4月26日(水)
会場:ペロタン東京(東京都港区六本木6-6-9)
時間:12:00 ~ 18:00 


2. Before/After(広島市現代美術館)

シリン・ネシャット《Land of Dreams》(2019) Courtesy of the artist and Gladstone Gallery (c) Shirin Neshat

石内都の新作などから考察する「まえ」と「あと」、16年ぶりの新規購入作品も

3月にリニューアルオープンした広島市現代美術館が、同館の大規模改修工事から発想を広げ、さまざまな「まえ」と「あと」の現象や状況に注目した特別展を開催する。本展では、社会の変化や葬り去られた過去や歴史を敏感に察知し、作品化してきた作家たち45人/組を取り上げる。美術館と関わりの深い、作品の経年による「変質」「劣化」、兵器とエネルギー源という相反する結果をもたらす「原子力」などをキーワードに、約100点の作品で“前後”を考察していく。

所蔵品を軸に、本展のために制作された新作も多数紹介する。写真家の石内都は、2019年の台風で浸水被害を受けた自作を被写体とした《The Drowned》シリーズから、未発表の新作を交えて展示する。ブロンズ彫刻の保存修復技法をニンジンに適用した作品で知られる髙橋銑は、刻々と変化する香りを素材にした新作を披露。故郷福島の状況を一変させた東日本大震災と原発事故を作品の出発点にする毒山凡太朗は、広島でのリサーチを経て、福島と広島の考察を促す映像インスタレーションを制作した。所蔵品からは、16年ぶりに同館が新規購入した、イラン出身のシリン・ネシャットの大規模インスタレーションが見どころ。ほか出品作家は、靉嘔、大岩オスカール、岡本太郎、デニス・オッペンハイム、オノ・ヨーコ河原温、田中功起、蔡國強、平田尚也、キース・ヘリング、細江英公、ヘンリー・ムーア、森村泰昌ヤノベケンジ、横山奈美など。

リニューアルオープン記念特別展 Before/After
会期:3月18日(土)~6月18日(日)
会場:広島市現代美術館(広島県広島市南区比治山公園1-1)
時間:10:00 ~ 17:00 (入場は30分前まで)


3. IMAGRATION(Gallery COMMON)

Antone Könst《Apothecary Rose,》(2022) Oil on linen, 198 ×152 cm. Courtesy of Each Modern and Gallery COMMON.

原宿のストリートカルチャーを台湾のキュレーターが解釈

東京と台湾のギャラリーが互いの展覧会をキュレーションし合う、文化の垣根を超えたアート交流展。台北のギャラリー「Each Modern」のキュレーターを務めるLan Chung-Hsuanが、原宿にある「Gallery COMMON」の展示を担当する。Lan Chung-Hsuanは、原宿のストリートカルチャーを背景にしてきたGallery COMMONの精神を踏まえつつ、ジャンルを超えたコラボレーションが繰り広げられてきた原宿の価値観と共鳴する5人の国際的な現代アーティストを選出した。

絵画や彫刻で、おとぎ話のような世界観を生み出す米国のアントン・ケンストは、大事なモチーフの一つである花を描いた新作を発表する。台湾のツェン・チェンインは、現代的な服装や髪形の人物を水墨画で表現し、洋の東西をミックスさせる。絵画で「子供らしさ」を描いてきたイギリスのフェリックス・トレッドウェルは、幼少期の無垢な空想に影響されがちな若者の自己探求をテーマにした新作ポートレートを展示する。ほかに、台湾のウー・メイチーとチャン・ティントンが参加。

IMAGRATION
会期:3月25日(土)~4月23日(日)
会場:Gallery COMMON(東京都渋谷区神宮前5-39-6 B1F)
時間:12:00 ~ 19:00


4. ケリス・ウィン・エヴァンス(草月会館)

Cerith Wyn Evans, “F=O=U=N=T=A=I=N”, 2020, white neon, 382 x 1084 cm Courtesy of Taka Ishii Gallery and White Cube 

イサム・ノグチ作の石庭と、英国人作家の立体作品が共鳴する

いけばな草月流の本部が置かれる草月会館内にある、イサム・ノグチ作の石庭「天国」。この石造りの広場に、英国人の現代美術作家ケリス・ウィン・エヴァンスが立体作品を配置し、空間を舞台のように変容させる。文学、美術、物理などを、物語や概念を他者に伝える手段としてとらえたとき、先人たちの先駆的な試みに強く関心を抱くというエヴァンス。表現の要素を極限までそぎ落とした芸能「能」もそのひとつだ。この石庭にも能舞台の背景に描かれる松の木を据えて、3つの作品を展示する。

まず目を引くのは、床から天井までの光の柱。ゆっくりと明滅を繰り返すテンポが、石庭の「タンブル(音色)」を浮かび上がらせる。さらに、マルセル・プルーストの小説『失われた時を求めて』の日本語訳をネオン管の文字で作品化したものを、石庭の最上段に配置。そしてコンプレッサーによって自動演奏される、37本のクリスタルガラス製のフルートを使った立体作品が、呼吸をするように和音や不協和音を奏でる。視覚、空間感覚、聴覚の垣根を越えて知覚されるエヴァンスの作品世界を体感できる。タカ・イシイギャラリーでも個展を開催中(~28日)。

ケリス・ウィン・エヴァンス
会期:4月1日(土)~29日(土・祝)
会場:草月会館1F石庭「天国」(東京都港区赤坂7-2-21)
時間:10:00 ~ 17:00
特別協賛:ロエベ財団


5. ウェス・アンダーソンすぎる風景展 あなたのまわりは旅のヒントにあふれている(寺田倉庫G1ビル)

ホテル・ベルヴェデーレ スイス、フルカ峠 Carlo Kuettel (@carlokuttel), Hotel Belvédère

韓国で25万人動員の展覧会が来日。監督自身も認める“ウェス・アンダーソンっぽい”写真たち

数々の賞を受けた『グランド・ブダペスト・ホテル』を始め、個性的でおしゃれな世界観を撮る映画監督のウェス・アンダーソン。ユーモアを潜ませたシンメトリーな構図や色とりどりのパステルカラーなど、いかにも監督の作品に出てきそうな実在の景色を撮った写真300点超を集めた展覧会が開かれる。だが、本展に監督はノータッチ。撮影者は、ニューヨークに住む夫婦がウェス・アンダーソン風の旅の写真をInstagramに投稿したことから始まったコミュニティ「AWA(Accidentally Wes Anderson)」に参加する世界のフォロワーたちだ。

本展では、旅心をくすぐる世界各地の幻想的な風景写真を、旅に関する10のキーワードで紹介。撮影場所にまつわる物語も添える。ノスタルジーあふれる場所やフォトジェニックな景色もあれば、日常の風景を切り取って再解釈したものも。監督自身に「ぼくが撮りそうな写真だ」と言わしめた作品が並ぶ会場で、世界のファンと ウェス・アンダーソンの視点を共有する。

ウェス・アンダーソンすぎる風景展 あなたのまわりは旅のヒントにあふれている
会期:4月5日(水)~5月26日(金)
会場:寺田倉庫G1ビル(東京都品川区東品川2-6-10)
時間:11:00 ~ 19:00 (金曜と土曜・4月30日~5月4日・5月22日~25日は~21:00、入場は30分前まで)

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