ARTnewsJAPAN

怪物メドゥーサの謎めいたモザイク画を、古代ローマ皇帝の別荘で発見

古代ローマ皇帝の別荘を発掘調査中の考古学者が、ギリシャ神話に登場する怪物メドゥーサを描いた2つのモザイク画を発見した。科学ニュースメディアのLive Scienceが報じた。

中国・北京にある首都博物館で、イタリアの彫刻家ジョバンニ・ロレンツォ・ベルニーニ(1598-1680)のメドゥーサ像に見入る人々(2007年3月17日撮影)。Photo: China Photos/Getty Images

この別荘は、古代ローマ・アントニヌス朝のマルクス・アウレリウス帝、ルキウス・ウェルス帝、そしてコロッセオで剣闘士奴隷として戦ったことで知られるコンモドゥス帝が使用していたもの。メドゥーサは美しい女性の姿をしているが、髪は蛇で、見る者を石に変える目を持つギリシャ神話の怪物ゴルゴンだ。

遠くを見つめる謎めいたメドゥーサを描いたモザイク画の発見は、今年1月にニューオリンズで開かれたアメリカ考古学協会の年次総会で発表された。研究者によると、2世紀頃のものである可能性が高いという。モザイク画が見つかったのは、別荘にある直径20メートルほどの円形の部屋の壁で、北西方向と南東方向の壁に彫られた2つのくぼみに作られていた。

発表を行ったモンクレア州立大学(ニュージャージー州)の古典・人文科学教授で、遺跡発掘チームの共同責任者であるティモシー・レナーは、別荘を訪れた人々がメドゥーサの心の内にあるものに興味を持ったかという考察を披露していた。

また、レナー教授とともに発掘チームの共同責任者を務めるモンクレア州立大学のチャトル・アリヤモントリ教授は、「モザイク画の発見は、嬉しい驚きでした」とLive Scienceに語っている。この別荘の装飾のほとんどは、18世紀から19世紀にかけて剥ぎ取られてしまったからだ。

2人の教授によると、円形の部屋は別荘の応接室だったと見られる。2世紀にはメドゥーサの頭部が装飾によく用いられたが、「別荘の所有者が特別に(モザイク画を)注文したのか、この部屋の装飾を任された作家の気まぐれで作られたのか」は不明だという。

Live Scienceによると、この別荘の周辺では、第2次世界大戦中に「軍隊の移動」が頻繁に行われ、略奪が多かった。2014年に始まった発掘調査では遺物が多数見つかっているため、研究者たちは将来この地に遺跡公園を作ることを目標に掲げている。(翻訳:石井佳子)

from ARTnews

あわせて読みたい