最注目アーティストは誰だ!? 2023年度グッゲンハイム・フェローシップが決定
ジョン・サイモン・グッゲンハイム記念財団は今週、2023年度のグッゲンハイム・フェローシップを授与された171人の学者・アーティストを発表した。今回の受賞者には、現在最も注目されているアーティストが名を連ねている。
同フェローシップは48の分野(自然科学、社会科学、人文科学、創造芸術の4つの包括的なカテゴリーに分けられる)で、中堅として活躍するアメリカ、カナダ、ラテンアメリカ、カリブ海地域の市民または永住者を対象にしており、受賞者には助成金が贈られる。今回は約2500人の応募があった。同財団のエドワード・ハーシュ会長は声明で、次のように述べている。
「選ばれた皆さんは、私たちの生活をより豊かにし、より大きな知識と深い理解を提供するために尽力しています。彼らが素晴らしい未来へと導いてくれることを期待します」
美術部門では、カプワニ・キワンガのほか、Pamela Council、Jamal Cyrus、Diane Severin Nguyen、Tammy Nguyen、Samantha Nye、Evita Tezeno、そして、シカゴのMonique Meloche Galleryとの契約が同時に公表されたLavar Munroeが選ばれた。Munroeのフェローシップについては、俳優ロバート・デ・ニーロの実父で画家、かつ1968年にフェローとなり2019年までフェローシップを支援し続けたロバート・デ・ニーロ・シニアの意志を息子デ・ニーロが引き継いだかたちだ。
キワンガは、過去に数々の著名な美術賞を受賞し、2024年のヴェネチア・ビエンナーレにカナダ代表として参加が決定しているなど、現在最も注目されているアーティストの1人だ。 Councilは2021年、タイムズスクエアでパブリックアート《A Fountain for Survivors》を発表。US版ARTnewsが、その年を象徴するアート作品のひとつに選んでいる。
Tammy Nguyenの作品は、Art in Americaの2022年12月号「The Religion Issue(宗教の問題)」特集の表紙を飾った。Nguyenは、絵画に登場するキリスト教のイメージについての座談会で、「ポストコロニアリズムや地政学に関連する混乱を探ることに関心があります。歴史や物語を組み合わせるのが好きなのですが、それは必ずしも同一化せず、並行して存在しているのです」と話している。
また、フィルム・ビデオ部門ではMartine SymsとSasha Wortzel、写真部門ではPao Houa HerとCurran Hatlebergが受賞している。Houa Herは2022年、SymsとHatlebergは2019年のホイットニー・ビエンナーレで作品が展示された。Wortzelは、Tourmalineと共同監督した実験映画『Happy Birthday Marsha!』や、2017年にニューミュージアムで開催された画期的な展覧会「Trigger: Gender as a Tool and a Weapon」が知られている。
また、美術研究部門で、プリンストン大学の19世紀美術史教授であるBridget Alsdorf、カリフォルニア大学アーバイン校ビザンチン美術専門家のRoland Betancourt、ニューヨーク大学の人類学教授で同大ラテン系プロジェクト創設者Arlene Dávilaの3人が授与された。
アメリカにおけるラテン系芸術や文化を探求、促進するため2018年に設立されたニューヨーク大学のラテン系プロジェクトは、近年メロン財団から130万ドル(約1億7200万円)の助成金を受け、大学の代表的な研究施設へと成長している。Dávilaは研究者として、現代アート界における重要な発言者としての地位を確立しており、アート市場がどのように運営され、誰を排除しているのか、特にラテン系アーティストの地位について考察している。2020年に出版された『Latinx Art: Artists/Markets/Politics』 (Duke University Press)では、こうした市場原理について分析を行った。彼女は、ラテン系アーティストをはじめとするアート界のアウトサイダーが、「アート界では語られることのないことを発言し、それに関わる能力」を持っていると考えている。
US版ARTnewsのインタビューでDávilaは、「私たちは、アーティストを作品によってのみ語るべきです。アートの世界には、人種は関係ない、アイデンティティは関係ないという神話があります。それは哀れなほど真実ではありません。しかし、白人男性主体の芸術界を維持・擁護するために、人々はそう言って回るのです」(翻訳:編集部)
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