アート・バーゼル・マイアミ・ビーチが賃料半減を勝ち取る。「かつてない低迷」訴え、撤退も示唆
マイアミ・ビーチ市議会は、地元有力者の猛反発を押し切り、アート・バーゼル・マイアミ・ビーチの会場賃料を年間約100万ドル(約1億6000万円)から50万ドル(約7900万円)に引き下げる案を承認した。契約は2031年まで延長される。
かつてはリゾートやナイトライフの街という印象が強かったマイアミ・ビーチは、現在、文化の中心地としての地位を確立しつつある。その変化を後押ししてきたのが、2002年から開催されているアート・バーゼル・マイアミ・ビーチだ。
このフェアをめぐり、主催者とマイアミ・ビーチ市の間では、賃料の交渉が1年半にわたって行われてきた。ニューヨーク・タイムズ紙によれば、フェア運営側はこれまでマイアミ・ビーチ・コンベンションセンターに、年間賃料として約100万ドル(約1億6000万円)を毎年支払ってきたが、これを半額に引き下げるよう市に要求。毎年約8万人が訪れる同フェアが市にもたらす経済効果は、約6000万ドル(約95億円)とも試算されている。
契約更新をめぐる交渉は難航していた。同紙によると、契約交渉の重要な局面となったのが、2025年12月にマイアミの自動車ディーラーであり、億万長者の慈善家としても知られるノーマン・ブラマンの自宅で開かれた会合だ。ブラマンはUS版ARTnewsが発表する「TOP 200 COLLECTORS」の常連で、アート・バーゼルをマイアミ・ビーチに誘致する際にも中心的な役割を果たした。この会合でアート・バーゼルの親会社MCHグループの最高経営責任者(CEO)、アンドレア・ザッピアは、フェアを他都市に移転する可能性を示唆。これに対しブラマンは、賃料の減額要求を「侮辱的」と非難し、移転の可能性についても単なるはったりだと一蹴したという。
しかし10月14日、スティーブン・マイナー市長らが参加した市議会は、年間賃料をフェア側の要求通り、半額の50万ドル(約7900万円)に引き下げ、2031年まで契約を延長する案を賛成多数で承認。同紙は、新契約には消防・警察・救急サービスにかかる費用の減免も含まれており、フェア側は年間で最大65万ドル(約1億300万円)を節約できる報じている。また、フェア開催日の前後30日間は、他のアートフェアによるコンベンションセンターの利用が禁止される。さらに、会場周辺の約260ヘクタールに及ぶ「アート・バーゼル・ゾーン」内の公園やビーチで開催されるイベントには、アート・バーゼル側に拒否権が与えられることになった。
市議会の審議に電話で参加したブラマンは、実業家のジェームズ・マードックが2020年にMCHグループへ約8000万ドル(現在の為替レートで約127億円)を出資したことや、同社が2026年上半期に約2200万ドル(約35億円)の純利益を計上したことを指摘。こうした財務状況を踏まえ、市は賃料の減額に応じる必要はなく、より有利な条件で契約を結ぶべきだと主張した。さらに、「納税者が民間企業に助成する筋合いはない」と述べた。
さらにブラマンは、アート・バーゼルが撤退すれば、競合するアートフェアのフリーズが直ちにコンベンションセンターに進出するだろうとも主張。しかし、フリーズの親会社MARIの広報担当者は、ニューヨーク・タイムズ紙の取材に対し、この主張を「事実無根」と否定している。
アート・バーゼル側が示唆した撤退の可能性に対して、市議会議員からも疑問の声が上がっていた。デヴィッド・スアレス議員は「交渉がまとまらなかった場合、アート・バーゼルはマイアミ・ビーチから撤退する準備ができているのでしょうか」と問いかけた。これに対し、アート・バーゼルのCEOを務めるノア・ホロウィッツは、賃料が引き下げられなければ「マイアミ・ビーチでの開催を再考せざるを得ない」と述べている。
ホロウィッツは、こうした判断の背景として、厳しい市場環境を挙げている。マードックによる2020年の投資は、経営破綻の危機にあったMCHグループを「安定させる」ために不可欠だったと説明。また、現在のフェアについても「2000年代初頭にアート・バーゼル・マイアミ・ビーチを立ち上げて以来、経験したことのないような低迷」に直面していると語った。出展ギャラリー数も、昨年の283軒から今年は約250ギャラリーに減少する見通しだという。
今回の合意について、アート・バーゼルの広報担当者はUS版ARTnewsにこう語った。
「アート・バーゼルと親会社のMCHグループは、マイアミ・ビーチ市との長年にわたるパートナーシップを延長できることを嬉しく思います。今後もフェアを通じて、経済や文化、地域社会に貢献していきたいと考えています。今回の合意により、事業環境や市場動向が変化するなかでも、フェアの継続的な開催が可能になります」
(翻訳:編集部)
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