ARTnewsJAPAN

バスキアがジャズの巨匠へ捧げた作品が40年ぶりにオークションへ。予想落札価格は約40億円

ジャン=ミシェル・バスキアがジャズの巨匠、チャーリー・パーカーへオマージュを捧げた作品が、約40年ぶりにオークションに出品されることが分かった。

サザビーズで出品されることが発表された、バスキア《Now's the Time》(1985)。Photo: Courtesy Sotheby's

作品は《Now's the Time》(1985)で、US版ARTnewsのトップ200コレクターにランクインしているピーター・ブラントのコレクションだった。この作品は、5月に開催されるサザビーズのコンテンポラリー・イブニングオークションの目玉となり、少なくとも3000万ドル(約40億円)の値がつくと予想されている。

バスキアの作品といえば、鮮やかな色彩と、ジャズのシンコペーションのリズムを思わせる抽象的な描写でよく知られている。それらに比べると《Now's the Time》は渋い印象を受ける。というのも、伝説のサックス奏者、チャーリー・パーカーが1945年に録音した同名のレコードを題材にしているからだ。

バスキアは熱心なジャズファンであり、アルバムのコレクターでもあったため、生前は3000枚ものレコードを所有していた。バスキアは、ジャズの偉大なミュージシャンを作品に数多く登場させたが、パーカーほど頻繁に、そして愛情を込めて描いたミュージシャンはいなかった。パーカーは、1940年代後半に起こった、自由な即興演奏が特徴のジャズの新潮流ビバップ(Bebop)の中心人物として重要な役割を果たした人物だ。

バスキアはパーカーに敬意を表し、自身の作風を抑えて、マットな黒の円形に白い文字をシンプルに書き入れた。円は完全ではなく、不規則にカーブを描いている。

サザビーズの現代美術部門のリーダー、グレゴワール・ビローは、声明で以下のように語っている。

「《Now's the Time》は、バスキア本来の、ストリートアートの持つ爆発的な勢いを抑え、シンプルなものにしています。彼の作品の中で、傑作に数えられるでしょう。パーカーの功績を称えるとともに、しっかりと彼なりの表現をしているのです」

しかし、この作品は、今シーズンのオークションにおける、最も高価なバスキアの絵にはならないだろう。5月に、クリスティーズでファッションデザイナーのヴァレンティノ・ガラヴァーニが所有していた作品が出品される予定で、そちらの予想落札価格は4500万ドル(約60億円)以上だからだ。(翻訳:編集部)

from ARTnews

あわせて読みたい