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ジャングル奥地で作品制作の機会を提供! 「人類と自然の共生」をテーマにAIアートを募集するユニークなアワードがスタート

先見性のあるリーダーたちは今、革新的なテクノロジーの力を活用しながら自然環境を尊重し、持続可能な未来を切り拓こうとしている。アートもまた、その流れと無縁ではない。その一例を紹介しよう。

Photo: Courtesy of AZULIK City of Arts

環境スチュワードシップ(*1)への強い意識を持つリーダーたちの1人に、AZULIK(アズリク)グループの創設者兼CEOであるロス(エドゥアルド・ネイラ) がいる。メキシコ・ユカタン半島のトゥルムでエコリゾートを運営する AZULIKは、自然の懐に抱かれたアートセンター、 SFER IKムセイオンを擁していることでも知られる。


*1 環境に影響を与える全ての個人や組織が、環境保全と持続可能性のために責任を持った行動をすること。
 

そのロスが、SFER IKのクリエイティブ・ディレクター、マルセロ・ダンタスとともに新たな賞を立ち上げた。AIを用いた作品を制作するアーティストを対象とする、SFER IKアワードだ。

受賞アーティストには、AIを組み込んだ作品の開発資金として10万ドル(約1500万円)が贈られるほか、AZULIK Uh Mayと名付けられた広大なクリエイティブキャンパスでの、2カ月間にわたるアーティスト・イン・レジデンスの機会が与えられる。AZULIK Uh Mayには複数のワークショップ、地元の職人グループ、ファブラボと呼ばれる新しいデジタル設備一式が備えられており、レジデンスの期間中、アーティストはこのリソースを利用できる。また、2位と3位の受賞者にもレジデンスに参加することができる。

AZULIK(アズリク)グループの創設者兼CEO、アワード創設者のロス。Photo: Courtesy of AZULIK City of Arts

アーティストの活動分野を問わないSFER IKアワードでは、生物多様性、種族間の協力、先祖伝来の知識、科学技術と自然の調和のとれた統合をテーマに、AIを活用した作品を世界中から募集する。その目的は、マヤのジャングルという自然環境の中で、テクノロジーと芸術的実践の境界を押し広げるような、新しく大胆な作品を生み出す機会をアーティストたちに提供することだ。

受賞者が制作する作品は、SFER IKがトゥルムに開館を予定している野外美術館に展示される。この美術館の近くでは、アーティストのクリスティーナ・オチョアが、現在「Jardín de la Esperanza(希望の庭園)」を建設中だ。このアーティスティックで自然豊かな庭園は、生物多様性と祖先の記憶をとどめるための聖域となるという。

SFER IKアワードの背後にあるビジョンと、今後の受賞アーティストに期待することについて、ロスに話を聞いた。   

──新しい賞について、特になぜAIなのかを教えてください。 

受賞アーティストの作品は、トゥルムの中心部にある12万平方メートルのジャングルに位置し、海まで200メートルの地点にあるアートセンター、SFER IKムセイオンで展示されます。賞の対象は、人工知能を使用しつつ、古代の知性と自然から得られるインスピレーションに基づく作品です。

AIは「自然なもの」であると見なされるべきです。なぜなら、AIによるアート作品は人間の手と頭脳によって生み出されるものだからです。ジャングルの中での人類と自然の共生をAIを通して考えながら、自然を探求し、自然と交流することをアーティストに奨励したいと考えています。

Photo: Courtesy of AZULIK City of Arts

──SFER IKのアーティスト・イン・レジデンスで、アーティストに何を得てもらいたいですか

アーティストをジャングルの奥地に招いて作品を制作してもらうことで、環境からのインスピレーションで自らが変容を遂げ、周囲の風景と深く関わりあう機会を得てほしいと願っています。アーティストたちは豊かな自然環境に抱かれたAZULIKの新しい施設、FabLabとFabMatを利用することができます。そこは、最先端のテクノロジーと周囲の木々が共存する場所なのです。

ジャングルの中では、万物が影響し合っているということがはっきりと理解できます。私たちの誰もが全体の一部であり、みんなが参加することで初めて問題の解決策が見つかるのです。ここに住む私たちと同様、ジャングルはアーティストたちにすばらしい教えを与えてくれるはずです。(翻訳:清水玲奈)

アーティストの作品提案は11月17日まで募集中。詳細は公式サイト参照。

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