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ナン・ゴールディンが主宰の活動団体、薬害企業の名前削除を求めてハーバード大の美術館で学生と共にダイイン

4月20日、写真家のナン・ゴールディンが主宰する活動団体PAIN(Prescription Addiction Intervention Now:処方薬中毒への介入を今)が、アメリカの富豪サックラー一族の名を冠した芸術施設であるハーバード大学の美術館で、同大の学生と共にダイインを実施した。

ハーバード美術館のアトリウムでダイインする、PAINのメンバーとハーバードの学生たち。Photo: Ben Roberts

サックラー一族は、所有するパデュー・ファーマ社が製造した中毒性のある鎮痛剤「オキシコンチン」を通じて、オピオイドの蔓延を煽ったとして非難されている。そして一族は一時期、メトロポリタン美術館ルーブル美術館など、世界中の美術館に寄付をしていた。

PAINによる抗議活動は、グッゲンハイム美術館やメトロポリタン美術館などで行われてきたが、彼らの活動により、寄付を受けた美術館のほとんどはサックラーの名前を消し、サックラー一族からの寄付を受け入れないと表明している。

今回は、彼女の母校であるハーバード大学の美術館の施設のうち、アーサー・M・サックラー美術館と、サックラーの名を冠したキャンパス内のもうひとつの建物を標的とし、学生たちと一緒にダイインした。同館での抗議活動は2018年に次いで2回目

ハーバード美術館では、PAINのメンバーとハーバードの学生が、ダイインと共に「SHAME ON SACKLER(サックラーよ、恥を知れ) 」と書かれた横断幕を掲げ、同館の吹き抜けにパンフレットや薬瓶の雨を降らせた。

PAINのインスタグラムでは、「ハーバード大学のキャンパス中に名前が掲げられている、白人至上主義者や奴隷所有者の一族との関係を断ち切るよう学生たちが求めていることにも共鳴している」とコメントしている。

ゴールディンは、自身がオキシコンチン中毒を経験し、2017年にPAINを設立した。彼女の半生と芸術、アクティビズムは、ローラ・ポイトラスが監督した2022年のドキュメンタリー『All the Beauty and the Bloodshed』に描かれている。彼女は声明で、今回の抗議活動を次のように話している。

「ハーバード大学の卒業生として、私はサックラーの名前を削除することを要求します。アーサー・サックラーが無実だと主張するのは誤りです。彼は、パデュー社がアメリカにオキシコンチンを氾濫させ、過剰摂取の危機を招いた広告計画を立案したのです。彼は、サックラー家の誰よりも責任があります」

ハーバード大学のコミュニケーション・ディレクターであるジェイソン・ニュートンは声明で、「大学は、アーサー・M・サックラー博物館とアーサー・M・サックラー・ビルディングの名称を変更する提案が出ており、現在検討中です」と述べている。(翻訳:編集部)

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