イスラム国が破壊したパルミラ遺跡の文化財、シリアへ返還。チェコが修復に協力
シリア内戦で損傷し、チェコ・プラハの国立博物館に一時保管され修復作業が行われていた20点の文化財が、5月にシリアに返還されることになった。
チェコの首都プラハにある国立博物館で修復・一般公開されているのは、世界遺産のパルミラ遺跡で出土した石灰岩の葬祭用肖像画などの文化財だ。この遺跡は、2015年に過激派組織イスラム国(IS)の侵攻で破壊されたが、2017年にアサド政権軍が奪還した。
同館のミハル・ルケシュ館長は、返還のニュースを最初に報じたAFPへの声明で、紛争地域の文化財は、「戦闘」「イデオロギー的理由」「地元民による転売目的の窃取」の被害を受けやすいと述べている。また、今回返還される文化財は、金属ハンマーによって意図的に破壊されたとの博物館の見解を明らかにした。
同館は2017年からシリア政府関係者と連携し、シリア内戦で破損した文化遺産の修復を行ってきた。2022年には20点の文化財をシリアからプラハに移送し、6人の保存修復チームによる作業を実施している。
パルミラ遺跡の出土品は、以前から文化財保護の専門家による外交努力の対象になっていた。シリア中部のホムス県にあるパルミラ遺跡は、2017年にロシアの支援を受けたアサド政権軍がISから奪還。2018年にロシアの専門家が招集されたのを皮切りに、修復作業が続けられている。
チェコ国立博物館はこれまで、スーダンやアフガニスタンの文化財担当者とも同様の修復協力を行った実績がある。
なお、ブロンズなど金属製の遺物を含むシリアの文化財は、同館で5月まで開催中の展覧会「Restored Face」で展示されている。(翻訳:清水玲奈)
from ARTnews