77歳のアーティスト、アンナ・ボギギアンが世界的美術賞を受賞! アートを通じて政治や社会を見つめる手法は「非常に現代的」
世界最大の美術賞の1つであるヴォルフガング・ハーン賞2024が、各国のビエンナーレで幅広く活躍するアーティスト、アンナ・ボギギアンに授与されることが決定した。賞金10万ユーロ(約1580万円)が贈られるほか、ケルンのルートヴィヒ美術館に作品が収蔵される。
エジプト生まれでアルメニア系の両親を持つアンナ・ボギギアンは、塩の貿易やヴァージニア・ウルフの著作などを題材に、世界の歴史における政治的な出来事を掘り起こす作品で知られる。代表的なものには、広い展示室のあちこちに人物像を吊るした巨大なインスタレーションなどがある。
近年ボギギアンは、著名なビエンナーレへの出品を通じて国際的な名声を高めてきた。2012年のドクメンタ13に出品後、2015年の第56回ヴェネチア・ビエンナーレではアルメニア館で金獅子賞を受賞。日本では、2021年に森美術館で行われた「アナザーエナジー展:挑戦しつづける力―世界の女性アーティスト16人」にも参加していた。
ドイツ・ケルンのルートヴィヒ美術館が主催するヴォルフガング・ハーン賞の審査員で、ドクメンタとイスタンブール・ビエンナーレでボギギアンのキュレーションを担当したキャロライン・クリストフ=バカルギエフは、声明でこう述べている。
「アンナ・ボギギアンの作品に見られる詩的でユニーク、かつ率直な表現力は、表現主義の名作を数多く所蔵するルートヴィヒ美術館にふさわしいものです。彼女の国際的な認知度が高まったのはここ10年ほどのことであり、今回の受賞は生涯功労賞というより、話題性の高いアーティストとしての評価が認められたから。彼女の選択するテーマや、書籍や旅行、インターネット検索から得た歴史的物語を現在の世界における政治的・美的な議論に投影する手法は、非常に現代的なものと言えるでしょう」
10月14日からは、カナダ・トロントのパワープラントでボギギアンの個展が行われる。そこでは、民主主義という概念を題材にした最近の作品や、カナダに住んでいた頃に制作した本などが展示される予定だ。(翻訳:石井佳子)
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