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前澤友作氏が80億円超でバスキア作品売却へ。オークションハウスはフィリップス

実業家の前澤友作氏が、6年前にクリスティーズのオークションで落札したジャン=ミシェル・バスキアの《無題(悪魔)》(1982)を手放すことを明らかにした。当時の落札額は5730万ドル。

スイスのリーヘンにあるバイエラー財団で展示されたジャン=ミシェル・バスキアの《無題(悪魔)》(1982) Keystone/Georgios Kefala/AP Photo

同作品は、5月18日にオークションハウスのフィリップスで開催されるニューヨーク現代アートのイブニングセールに、保証付きで出品される予定だ。推定価格は7000万ドル(約81億円)で、フィリップスにとっては過去最高の落札額になる可能性がある。

バスキア作品は近年、オークションのシーズンを重ねるごとに高騰している。2021年だけでも、3点が4000万ドルを超える価格で落札された。

ファッション通販サイト「ZOZOTOWN」の創業者として財を成した前澤氏は、2016年から毎年、ARTnewsが選ぶアートコレクター200人に登場している。16年に《無題(悪魔)》を落札した際は、それまでのバスキアのオークション最高価格を更新。17年にはサザビーズで頭蓋骨を描いた《無題》を1億1050万ドルで落札し、バスキア作品の最高価格をさらに塗り替えている。この2点の購入で、前澤氏はアート界の有名人になった。

前澤氏は《無題(悪魔)》売却についての声明で、「アートコレクションは、オーナーと同様、常に成長し、進化し続けるべきものだと思います」と述べている。現在、千葉県に自身のアートコレクションを所蔵する個人美術館の設立準備を進めているところだ。

《無題(悪魔)》は幅490センチの作品で、バスキア作品の多くに登場する角の生えた悪魔のイメージが描かれている。ニューヨークのギャラリーオーナー、アダム・リンデマンによって出品された2016年のオークションでは、予想価格上限の4000万ドルを大きく上回る高額での落札となった。

同作品は、ロンドン、ロサンゼルス、台北のフィリップスの支店で事前展示された後、5月18日のセールの前にニューヨークに到着する予定だ。

フィリップスは、現代アート分野ではクリスティーズ、サザビーズに次ぐ世界第3位のオークションハウスで、このところ成長が著しい。2021年の年間売上高は9億9330万ドル。コロナ禍前から35%上昇し、同社史上最高の売上高を記録した。ニューヨークとロンドンに中心拠点があり、2022年秋には香港の西九龍文化地区にも進出を予定。また、ロサンゼルスにも拠点を設ける計画がある(時期は未発表)。

フィリップスのアメリカ地域プレジデント、ジャン=ポール・エンゲレンはARTnewsの取材に対し、「過去数年間にわたって積み重ねてきたことの成果が今、目に見える形で実現しつつある」と語っている。(翻訳:清水玲奈)

※本記事は、米国版ARTnewsに2022年2月28日に掲載されました。元記事はこちら

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