ボストンの美術館が環境活動家による抗議行動の予告で臨時休館。「オリジナルプリントのTシャツを着る予定だった」
マサチューセッツ州 ・ボストンにあるイザベラ・スチュワート・ガードナー美術館は9月7日、環境活動家が同館での抗議活動を予告したため臨時休館した。
イザベラ・スチュワート・ガードナー美術館館長のペギー・フォーゲルマンによると、同館の無料解放日の夜、環境活動団体「Extinction Rebellion」の関係者から抗議行動が計画されていることを知らされ、すぐに休館を決めたという。
同館は声明で、「現在開催中の展覧会 『Presence of Plants in Contemporary Art 』で紹介する多くのアーティストがそうであるように、私たちは気候変動危機に対処し、解明するための建設的な取り組みを支持します。しかし、観客や作品に危険を及ぼすようなやり方を容認することはできません。そして、無料開放日を選んだことはとても残念です」と述べた。
Extinction Rebellionは以前、2023年の3月にも同館で抗議行動を計画していた。同館はその時も臨時休館している。
イザベラ・スチュワート・ガードナー美術館は、慈善活動家でアートコレクターのイザベラ・スチュワート・ガードナー(1840-1924)が自身のコレクションを展示するため、1903年、ヴェネチア風の邸宅に開館した。その後同美術館は、史上最も悪名高い美術品強奪事件に巻き込まれる。
1990年代に、犯罪組織によりフェルメールの《合奏》、レンブラントの《ガリラヤの海の嵐》、《自画像》など3点を含む13点の名画が盗まれたのだ。事件は現在も解決しておらず、今も同館では、盗まれた絵画があったダッチ・ルームに、空の額縁が展示されている。このショッキングな事件を題材に多くのドキュメンタリーが制作され、最近では、2021年にNetflixのテレビシリーズ「ガードナー美術館盗難事件 消えた5億ドルの至宝」が公開されている。
Extinction Rebellionの公式サイトによると、デモ参加者たちは、美術館のダッチ・ルームにある空きスペースにアート作品を設置することを計画していた。その目的は、この地域で生物多様性が失われていることを認識させることだったという。
また、Extinction Rebellionは、X(旧ツイッター)で、「昨日、私たちはイザベラ・スチュワート・ガードナー美術館へのグループ遠足を計画しました。同館が犯罪組織によって13点の絵画が失われたことと、地球上で100万種以上の生物種が失われたことをリンクさせたオリジナル・アートをプリントしたTシャツを着て、平和的にコレクションを楽しむ地域の人々を率直に歓迎したかったのです。絶滅の危機に瀕している動物や植物そのひとつひとつが、自然が生み出した芸術作品なのです。その損失は甚大です」とも投稿している。
昨年からロンドンやマドリッド、ポツダム、フィレンツェなど世界各地で、環境活動団体がフィンセント・ファン・ゴッホやクロード・モネの作品や史跡をターゲットにした抗議行動を行い、気候変動がもたらす危険要因を認識するよう各国政府に呼びかけている。(翻訳:編集部)
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