ロシア侵攻でウクライナの文化財53カ所が損壊。ユネスコが公表
ユネスコによると、ロシアのウクライナ侵攻開始以来、53の文化財が破壊された。米国公共ラジオ放送(以下、NPR)が報じた。
3月30日時点で、被害を受けた53の文化財のうち宗教施設が29、歴史的建造物が16、博物館・美術館と記念碑がそれぞれ4つだと判明している。
ドロビツキー・ヤールのホロコースト記念碑もその1つだ。メノラー(ユダヤ教の象徴的存在である燭台)をかたどった巨大彫刻は、ウクライナのハルキウ(ハリコフ)で大量虐殺された、少なくとも1万6000人のユダヤ人を追悼するために建てられたもの。ロシア軍による破壊は3月26日に起きたとされる。
破壊の記録は衛星画像で追跡・検証していると、ユネスコの広報担当者はNPRに語っている。
ロシアのセルゲイ・ラブロフ外務大臣には、ウクライナの文化財所在地は知らされていた。そのうえ、文化財には1954年に採択されたハーグ条約(武力紛争の際の文化財の保護に関する条約)の保護下にあることを示す、ブルーシールドと呼ばれる標章がつけられている。しかも、ロシアもウクライナも同条約に調印しているのだ。この条約は、文化財の破壊を禁止している。
フランスの報道機関AFPが入手した、ユネスコのオードレ・アズレ事務局長からラブロフ外相宛ての書簡には、「これらの規範に対するいかなる違反も、加害者が国際的な責任を負うことになる」と記されている。
ユネスコはまた、ウクライナの文化部門と協力し、文化財保護に最善を尽くすためサポートを行なっている。
ユネスコの広報担当者がNPRに話したところによると、「移動可能な文化財を保管できる安全な場所の特定、消火手順の検討や強化を手助けしている」という。ウクライナの人々が自国の文化財を守ろうと奔走する中、保護材で包まれたり、地下シェルターに隠されたりした彫刻の画像が拡散されている。(翻訳:岩本恵美)
※本記事は、米国版ARTnewsに2022年4月4日に掲載されました。元記事はこちら。