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フィンランドがロシア行き美術品4600万ドル相当を押収

フィンランド税関が、ロシアへの美術品輸送3件の差し押さえを行ったとフィンランド政府当局が発表した。押収された美術品は総額4600万ドル相当という。

ヴァーリマーの国境検問所でフィンランド税関に押収されたロシアの美術品 Courtesy Finnish Customs
ヴァーリマーの国境検問所でフィンランド税関に押収されたロシアの美術品 Courtesy Finnish Customs

フィンランド税関のサミ・ラクシット執行部門長は「ロシアに対する制裁の執行が効果的に機能することが重要だ」と述べたうえで、「制裁措置の執行は我々の通常業務の一環であり、常にリスクに基づいた管理を行うよう指示している」と付け加えている。

4月初旬の週末、ヴァーリマー国境検問所でEUの制裁措置を理由に絵画や彫刻、古美術品が押収された。同税関責任者のハンヌ・シンコネンによれば、これらの美術品はイタリアと日本の美術館に貸し出されていたもので、ロシアに返却される途中だったという。

フィンランド税関は、当面の間「押収した美術品は、その価値や特性、安全性を総合的に考慮したうえで倉庫に保管される」との声明を発表した。当局は現在、フィンランド外務省と連携して犯罪捜査を行っており、10人が美術品輸送による制裁違反の疑いをかけられている。

ロシア連邦院のセルゲイ・ツェコフ議員は4月6日、フィンランドによる美術品押収は「窃盗だ」とロシア国営RIAノーボスチ通信に語った。また、CNNが報じるところによると、ツェコフ議員は「EUやNATOだけでなく、欧州全体がおかしくなってしまったようだ。ロシアが所有する美術品が故郷であるロシアの美術館に戻ることさえ許されない」と話したという。

押収された美術品の大半は、モスクワにある国立トレチャコフ美術館と国立東洋美術館からイタリアの2つの美術館に貸し出されていた。そのほか、日本の千葉市美術館で展示され、モスクワのプーシキン美術館へと返送中だった作品が含まれているとされる。

2月24日に始まったウクライナ侵攻に対し、米国やEUはロシアに多くの制裁を課している。フィンランド外務省によれば、高級品とされる美術品もEUの制裁リストに含まれるという。

ウクライナでの戦争は、ロシアと世界各国の美術界との関係を悪化させ、作品貸し出しの契約を複雑なものにしている。3月には、ロシアのサンクトペテルブルクにあるエルミタージュ美術館がミラノとローマの美術館に対し、著名作品数点を早急に返却するよう求めた。

また、ミラノのガッレリア・デイタリア美術館は、「Grand tour: The dream of Italy from Venice to Pompeii(グランドツアー:ヴェネチアからポンペイまで、イタリアの夢)」と題された展覧会(2021年11月19日〜2022年3月27日開催)のためにロシアの4つの美術館から貸し出された23作品を、会期終了間際に返却することを承諾している。(翻訳:岩本恵美)

※本記事は、米国版ARTnewsに2022年4月7日に掲載されました。元記事はこちら

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