ゼレンスキー大統領がヴェネチア・ビエンナーレに“作品”を出展。緊急メッセージを伝える
4月上旬、グラミー賞授賞式に事前収録でサプライズ登場したウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領。今度はヴェネチア・ビエンナーレにビデオで緊急メッセージを送ったと、アートネットニュース(Artnet News)が報じている。
ウクライナの「This is Ukraine: Defending Freedom(これがウクライナ:自由のために戦う)」展が、ヴェネチア・ビエンナーレ公認のコラテラル・イベントとして開催されている。ゼレンスキー大統領は同展のオープニングで、ロシアの勝利が芸術に及ぼしかねない影響について、次のように警鐘を鳴らした。
「専制国家は芸術を抑圧する。なぜなら、芸術の持つ力を恐れているからだ。芸術は、他の方法では伝えられないことを世界に向けて発信できる」
また、ゼレンスキー大統領はアート界と世界のリーダーたちにウクライナへの支援を強く求め、こう語っている。
「民主主義世界全体が自由という概念の上に成り立っているのだとしたら、なぜ自由を守ろうとする人が孤立感を覚える事態が生じるのだろうか? 自由が普遍的な価値であるならば、自由のために戦う国々が平等に支援を受けられないのはなぜなのか? 肝心なときに我われを引き離すものは何なのだろう? 政治家はこの疑問に答えてくれない。それを説明し、正すことができる専門家もいない。メディアの中にも答えは見つからないだろう。なぜなら、これは言葉を超えたところにある問題だからだ」
オープニングでは、ゼレンスキー大統領以外にも、ヴェネチア・ビエンナーレのロベルト・チクット会長、ヴェネチアのルイジ・ブルグナーロ市長、NFTアーティストのビープル、そして鉄鋼メーカーなどを所有するウクライナの大富豪、ビクトル・ピンチュークなどがスピーチを行った。
ピンチュークは、ゼレンスキー大統領を紹介する時に、あるウクライナ人女性が助けを求めて地下壕から世界のリーダーたちに呼びかける映像を流し、その女性が既に亡くなってしまったという事実を伝えた。しかし、わずかながら明るい話題もあった。ピンチュークは、最近ブルグナロ市長がウクライナ難民を自宅に招いたことにも触れている。
ロシアによる軍事侵攻のニュースを受け、ビエンナーレ開幕直前に設営された「This is Ukraine: Defending Freedom」展では、エフゲニア・ベロルセット、ニキータ・カダン、レシア・コメンコ、マリア・プリマチェンコ、タチアナ・ヤブロンスカ、ステファン・メディツキーら、ウクライナ人アーティストの作品を展示している。
ゼレンスキー大統領も作品を出展。そこには、次のような言葉がウクライナ国旗の上に書かれている。「我われは自由を守るために戦っている」(翻訳:野澤朋代)
※本記事は、米国版ARTnewsに2022年4月22日に掲載されました。元記事はこちら。