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  • 2022.05.20

イメルダ・マルコス夫人宅の映像に、押収されたはずのピカソの絵画

フィリピンの元大統領夫人、イメルダ・マルコスの自宅で、押収されたはずのピカソの絵画が発見された可能性がある。故マルコス元大統領の独裁政権下にあったフィリピンで、一族は汚職で巨額の富を得ていた。

マルコス家が公開した映像の左上に見える《横たわる女VI》 Courtesy BBM Media Bureau

故マルコス元大統領とイメルダ夫人の息子、愛称ボンボンことフェルディナンド・マルコス・ジュニアは、5月9日に行われたフィリピン大統領選挙で地滑り的勝利を収めた。しかし、マルコス家は不正蓄財の罪に問われていることから、その勝利には懸念も高まっている。

当選後、マルコス・ジュニア次期大統領がイメルダ夫人を訪問する映像が、マルコス一家によって公開された。それを見ると、イメルダ夫人の自宅には複数の美術品が飾られており、ソファーの上にはピカソの《横たわる女VI》らしき作品(あるいはレプリカ)が掛けられている。

これは、2014年に大統領府行政規律委員会(PCGG)が押収対象とした8点の絵画のうちの1点だが、映像に映っていたものが本物かどうかは分かっていない。PCGGは、マルコス家が汚職によって得た資金を調査・回収するために設置された。

しかし、この絵画を本物とする見方が複数から出ている。PCGGの元委員長、アンドレス・バウティスタもその1人だ。バウティスタはフィリピンのニュースサイト、ラップラーのインタビューで、PCGGが押収したピカソの絵は「偽物」だったとして、「(本物は)まだ彼らの手元にある」との見解を述べた。

故マルコス元大統領は20年の在位期間中、汚職によって100億ドルもの私財を得たとされる。1986年に退陣したが、政権崩壊で生じた経済の不安定化は現在もフィリピンの社会情勢に影響を及ぼしている。

故マルコス元大統領が権力の座にあった頃、一族は海外の銀行口座や不動産に資金を移し、美術品や宝石、有名ファッションブランド品などを購入した。

最近の報告によると、PCGGはマルコス一族からおよそ50億ドル分の不正財産を回収している。うち約24億ドルは裁判中で、多くの財産の所在が明らかになっていない。今後マルコス・ジュニアが大統領になれば、PCGGの委員を任命する権限を持つため、残りの資金の押収が大きく妨げられる可能性がある。

現在、イメルダ夫人は汚職容疑7件に関する2018年の有罪判決を不服として控訴している。そのほか、一族の財産に関する未解決の訴訟は数十件に達する。(翻訳:清水玲奈)

※本記事は、米国版ARTnewsに2022年5月16日に掲載されました。元記事はこちら

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