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ドクメンタ15の参加アーティストリスト。日本からは栗林隆とCINEMA CARAVANが予定

ドイツのカッセルで5年に1度開催される世界的な芸術祭「ドクメンタ」。2022年6月18日から開催される第15回の参加アーティストが発表された(~9月25日)。芸術監督を務めるインドネシアのアート・コレクティブ、ルアンルパが、集合的な力をコンセプトにドクメンタ15のキュレーションを行う。

ドクメンタ15のキュレーションを担当するインドネシアのアート・コレクティブ、ルアンルパのメンバーたち Photo: Gudskul / Jin Panji 画像引用元: ドクメンタ15公式ウェブサイトhttps://documenta-fifteen.de/ueber/

ドクメンタは、一風変わった方法で重大発表をすることでも知られるが、その実験精神は今回の参加者発表にも表れている。ドイツでホームレスや貧困に苦しむ人々が運営する、アスファルト誌への掲載という形で行われたのだ。ドクメンタの広報担当者によると、正式発表は2021年10月4日。

リスト自体の体裁も少々型破りだ。よくあるアルファベット順ではなく、出身地のタイムゾーンごとに分けられており、普通はアーティスト名と一緒に表示される経歴などの情報はいっさいない。アスファルト誌の記事によると、アーティストたちは「マジェリ(majeli:集合・協議会)」ごとにまとめられているという。

ドクメンタ15の大枠のテーマとして示されているのは、「ルンブン(Lumbung)」という概念だ。これは、インドネシア語で人々がリソースを共有するための、一種のコモンズ(土地や資源の共同利用のための取り決め・仕組み)を意味する。

世界で最も重要な芸術祭の1つであるドクメンタを企画するにあたり、ルアンルパの9人のメンバーたちがこだわったのは「コレクティブ(集合体)」の精神だ。自分たちだけで仕切るのではなく、他のアーティストグループにも恊働を呼びかけている。ルアンルパは以前、ARTnewsに次のように語っている。「他者とのコラボレーションは、新しい友人を作るようなもの。そこから多くのことが学べる」

参加アーティストは今後増える可能性もあるようだが、その顔ぶれは少々変わっており、ドクメンタのような大規模イベントで通常見られる国際的なスター作家はほとんどいない。

たとえば、過去・現在・未来のつながりを探求する2人組パフォーマンス・ユニットのブラック・クァンタム・フューチャリズム(Black Quantum Futurism)、アフリカ文化に焦点を当てた出版物やイベントを通じて人々に政治的行動を促す南アフリカのクリエイター集団チムレンガ(Chimurenga)、拾った素材や自然物などを用いた作品を通じてアメリカ先住民の経験を考察したジミー・ダーハム、アジアの現代美術史を記録し保存しようとするアジア・アート・アーカイブ(Asia Art Archive)などがライナップされている。

チケットについては通常販売に加え、他の人が無料で入場できるようにする、「ソリダリティー・チケット」という代理購入の仕組みもある。ドクメンタ15の公式サイトはこちら。(翻訳:野澤朋代)

「マジェリ」ごとにリストアップされた参加アーティストは以下の通り(カッコ内はタイムゾーン)。

ikkibawiKrrr (KST)
ook_reinaart vanhoe (CET)
Richard Bell (AEST)
Taring Padi (WIB)
Wakaliwood (EAT)

Arts Collaboratory (diverse time zones)
Black Quantum Futurism (EST)
Chimurenga (SAST)
Jumana Emil Abboud (EET)
Nino Bulling (CET)
Agus Nur Amal PMTOH (WIB)
Subversive Film (CET, EET)

Cinema Caravan und Takashi Kuribayashi (JST)
Kiri Dalena (PHT)
Nguyen Trinh Thi (ICT)
Safdar Ahmed (AEST)
Sakuliu (TST)

Atis Rezistans / Ghetto Biennale (EST, WET) 
Marwa Arsanios (CET)
Sourabh Phadke (WET, IST)
Yasmine Eid-Sabbagh (BT, WT) 
*foundationClass* collective (CET)

Another Roadmap Africa Cluster (ARAC) (WAT, CAT, EAT)
Archives des luttes des femmes en Algérie (WAT)
Asia Art Archive (HKT)
Centre d’art Waza (CAT)
El Warcha (WAT)
Graziela Kunsch (BRT)
Keleketla! Library (SAST)
Komîna Fîlm a Rojava (EET)
Sada (regroup) (AST)
Siwa plateforme – L’Economat at Redeyef (WAT)
The Black Archives (CET)

Baan Noorg Collaborative Arts and Culture (ICT)
Dan Perjovschi (EET)
Fehras Publishing Practices (CET)
Nhà Sàn Collective (ICT)
The Nest Collective (EAT)

Hamja Ahsan (WET)
Jimmie Durham (CET)
La Intermundial Holobiente (WET, ART, EST)
Pinar Öğrenci’ (CET)
Saodat Ismailova (UZT)

Amol K Patil (IST)
BOLOHO (CST)
Cao Minghao & Chen Jianjun (CST)
CHANG En-man (TST)
Sa Sa Art Projects (ICT)

Alice Yard (AST)
Erick Beltrán (CET)
LE 18 (WAT)
MADEYOULOOK (SAST)
Party Office b2b Fadescha (IST, EST)
Serigrafistas queer (ART)

※本記事は、米国版ARTnewsに2021年10月1日に掲載されました。元記事はこちら

ドクメンタ15に参加中の栗林隆さんのインタビューはこちら

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