NFTの取引量が97%減少する一方、クリスティーズは新NFTプラットフォームを立ち上げ。NFTニュースまとめ
世界的なNFTオンラインマーケットプレイスの累積データによると、NFTの取引量は2022年1月のピーク時から97%も減少したとブルームバーグが報じた。その一方で、オークションハウス最大手の1社、クリスティーズが、NFTプラットフォーム「クリスティーズ3.0」を立ち上げ、取引がよりスムーズに出来るようになった。混迷する今のNFTシーンを伝える2本の記事をまとめてお届けする。
NFTの取引量は1月のピークから97%減少。暗号資産は冬の時代へ
ブルームバーグの報道によると、NFT(アートおよびその他収集品)の取引量は1月のピーク時から97%もの減少になっている。
今年1月、NFT市場の取引額は172億ドルに上り、2021年8月に記録した42億ドルを大幅に上回った。しかし、その後市場は急減速。9月はわずか4億6690万ドルまで落ち込んでいる。
NFT市場の低迷は、金利引き締めによる経済全体への影響を受けたもの。暗号資産全体では2兆ドル規模の縮小が起きているという。また、詐欺や盗難、新たな税制などの悪条件が重なり、コレクターの購入意欲も減退している。
NFT市場はこの逆風に耐えられないようで、かつて隆盛を誇ったNFT関連の事業は解散や縮小を余儀なくされている。たとえば、NFTマーケットプレイスの最大手、オープンシー(OpenSea)は、7月中旬に従業員の20%を解雇。これは明らかに、暗号資産冬の時代の到来を告げるものだ。
暗号通貨イーサリアムの環境負荷を緩和し、ブロックチェーンのエネルギー消費を99%削減するためのザ・マージ(The Merge)と呼ばれる大型アップデートも、期待されていた取引増加を市場にもたらすことはなかった。
しかし、誰もがNFT市場の下落を嘆いているわけではない。
「暴落してよかったと思う」と言うのは、ニューヨークのアートディーラー、アルベルト・ムグラビだ。ムグラビは、ウォーホルやバスキア、近頃はビープルなどを所有するコレクターでもある。
彼はARTnewsの取材にこう語った。「市場が縮小したとき、一握りのアーティストだけが成功してさらに前進できるというのは、いつの時代にも起こること。真のアーティストが生き残り、よりビッグに、よりすばらしく育っていくものだ」(翻訳:平林まき)
暗号資産への賭けを続けるクリスティーズ、NFTプラットフォームを立ち上げ
オークションハウス最大手の1社、クリスティーズが、新たにNFTプラットフォーム「クリスティーズ3.0」を導入。オークション参加者は自分のデジタルウォレットを同プラットフォームに直接接続し、NFT作品の入札ができる。これにより、オープンシー(OpenSea)のようなNFTマーケットプレイスと同様の機能を持つものになる。
クリスティーズのライバル社であるサザビーズもNFTマーケットプレイスに参入しているが、今までのところ、良い結果ばかりとは言えないようだ。
クリスティーズのデジタルアートセールス責任者のニコール・セールス・ジャイルスは、「クリスティーズ3.0が、従来のイブニングセールのような高い水準のNFTの売上に取って代わるとは思いません」とARTnewsに述べている。
ジャイルスは、今年7月にクリスティーズを離れたノア・デイビスの後任だ。これまでクリスティーズの現代アート部門に10年間勤務し、2021年の有名なビープル落札の後、NFTを担当するようになった。ちなみに、ノア・デイビスは、Bored Ape Yacht Club(ボアード・エイプ・ヨット・クラブ)やCrypto Punks(クリプトパンクス)を展開するユガラボに移っている。
「クリスティーズ3.0では、デジタルアートをより幅広く迅速に提供し、新進アーティストのオークションの頻度を上げ、より多様なアーティストやコレクターとのつながりを深めていきます」と、ジャイルスは抱負を語っている。
クリスティーズ3.0の初オークションでは、先ごろユナイテッド・タレント・エージェンシー(UTA)と契約を交わした18歳のアーティスト、ダイアナ・シンクレアの作品が出品される予定だ。シンクレアの短編ビデオ作品の予想落札額は、6〜8 ETH(約7990ドル〜1万650ドル)とされている。
ハリウッドの大手タレントエージェンシーUTAは、8月にNFTインフルエンサーのアンドリュー・ワンやNFTアーティストのヴィニー・ヘイガーなどとも契約をしたばかりだ。これは今のNFT市場の低迷を考えると、逆張りのようにも思える。
今年5月に暗号資産の冬の時代が始まって以降、NFT市場は閑散としている。しかし、ジャイルスは、今はそれほど悪いタイミングではないという。というのは、ザ・マージ(The Merge)と呼ばれる大型アップデートで、イーサリアムでの取り引きがより環境にやさしいものになったからだ。つまり、イーサリアムの環境負荷を気にしてNFTアートの収集をためらっていたかもしれないコレクターを呼び戻すきっかけになると踏んでいるわけだ。
このアップデートは暗号通貨が巻き返すきっかけになるだろうと期待されていたが、今のところイーサリアムの価格にはほとんど影響が出ていない。(翻訳:平林まき)
※本記事は、米国版ARTnewsに2022年9月28日と9月29日に掲載された記事をまとめたものです。それぞれの元記事はこちら(9月28日、9月29日)。