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訃報:超絶技巧のライブドローイングで知られる韓国のイラストレーター、キム・ジョンギが急逝。寺田克也とのコラボも

  • 2022年10月11日
  • INTERNATIONAL

Text: Shanti Escalante-De Mattei

世界的に知られる韓国人イラストレーターで漫画家のキム・ジョンギ(金政基)が、10月3日、パリで死去した。享年47歳。ニューヨークのコミコンに参加するため空港に向かう途中、鋭い胸の痛みに襲われ、その後病院で亡くなった。2017年には日本のイラストレーター・漫画家の寺田克也と、超絶技巧のコラボイラスト集を出版している。

世界的なブックフェア、第36回リーブル・パリで作品の前に立つ韓国のイラストレーター、キム・ジョンギ(2016年3月18日撮影) (Photo by Jean-Marc ZAORSKI/Gamma-Rapho via Getty Images)Gamma-Rapho via Getty Images

キム・ジョンギは、人間、戦車、建物、スーパーヒーロー、動物などが広大な風景をぎっしり埋め尽くす様子を資料なしで描ける特異な能力の持ち主として知られ、観客の目の前でライブドローイングを見せるツアーを世界中で行っていた。亡くなる前も、パリのギャルリー・ダニエル・マジェンでライブドローイングを実施したばかりだった。

ジョンギの盟友、スーパーアニ社のキム・ヒョンジンCEOは、ジョンギのインスタグラムにメッセージを投稿し、「私たちのためにこれだけのことをしてくれたのだから、あなたはもう筆を置いていい」とその死を悼んでいる。

キム・ジョンギは1975年、ソウルに隣接する高陽(コヤン)市生まれ。幼い頃から絵を描くのが得意で、19歳で釜山の東義大学校に入学し、美術とデザインを専攻した。彼は卓越した記憶力を持ち、見たものをいつでも思いのままに記憶から引き出して描くことができる才能に恵まれていた。インタビューでは、子どもの頃からずっと、画像を頭の中にストックしてきたと繰り返し語っている。

2021年のコリア・タイムズ紙の記事では、こう話している。「スニーカー、自転車、バイク……欲しいのに手に入らないものへの強い思いがきっかけでした。ランニングシューズが欲しければ、雑誌の写真を集め、友人の靴をよく観察し、手で触れてさまざまな角度から見たときの形を覚えるんです。それを絵にすれば自分のものになるので」

この作業は年齢を重ねても続き、2年間の兵役中はさまざまな軍用車両や兵器を記憶し、後に絵の中に登場させている。

兵役を終えると、マンファ(韓国の漫画)に絵を提供するイラストレーターとしてのキャリアをスタートさせた。短編のグラフィック・ストーリーを描いたり、パク・スンジンやフランスのベルナール・ヴェルベールのような作家とのコラボで作画を引き受けたりして活躍。やがてマンファ講座で教えるようにもなる。

10月3日、ジョンギのインスタグラム最後の投稿。パリのパルク・デ・プランスで開催された地元のサッカーチーム、パリ・サンジェルマンの試合に訪れ、ライブドローイングを行っていた。

2011年、初めて観客を前にライブで絵を描いたことが、彼のアーティスト人生の大きな転機になった。それは、富川(プチョン)で開催されたコミコン(コミックコンベンション)でのことで、その様子を撮影したのがスーパーアニ社のCEO、キム・ヒョンジンだ。スーパーアニ社は画集の出版のほか、アート教室やライブドローイングなどのイベント事業を手がけている。

コミコンの動画はたちまち話題になった。資料や下書きなどはいっさい準備せず、筆ペン1本で魔法のように完璧な絵を描くジョンギの才能に、アーティストから漫画ファンまで動画を見た誰もが驚嘆。ジョンギはそれ以降、ライブドローイングをはじめ、その非凡な才能を生かすプロジェクトで引っ張りだこになった。2014年には、クリスティーズでもライブドローイングを行っている。

その後、ジョンギはスケッチブックのドローイングを編集した作品集を6冊出版。そのうち1冊はエロティックな作品だけを集めたもので、12年間で出版した作品は合計4500ページにも及ぶ。さらに、マーベルやDCコミックスにも作品を提供するほか、個人による魚眼アートのドローイングでギネス世界記録に挑戦し、最長時間を達成した。ヨーロッパのファンサイトによると、このときは4日間かけて壮大な作品を完成させたという。

ネット上でジョンギの突然の死を悼む数多くのアーティスト、ファン、漫画関係者の1人が、DCコミックスのチーフ・クリエイティブ・オフィサー、ジム・リーだ。彼はツイッターにこう書いている。

「まるで写真のような記憶力を持つジョンギが、唯一無二のスタイルとセンスでイラストを生み出す様子は不気味なほどで、本当に魔法のようだった。亡くなったなんて、まだ信じられない。ちょうどこの土曜日に、また会って(コミコンへの参加を)祝う予定だったのに」(翻訳:清水玲奈)

※本記事は、米国版ARTnewsに2022年10月6日に掲載されました。元記事はこちら

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