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  • 2022.12.15

古代ローマの「お宝」コイン、英国の博物館で盗難の疑い

日本円にして数十万円相当の古代ローマ時代のコインが盗まれた疑いがあると、12月8日付のデイリー・メール紙が伝えた。一般人が発見したこの貴重な遺物は、大英博物館での鑑定が予定されていた。

大英博物館の「Portable Antiquities Scheme(小型の古代遺物に関するスキーム)」の一環として発見者から委託されたコインの一例。グロスターシャー州ウィックワーで、3つの壺に入った紀元300〜400年頃の銅合金のコイン6500枚以上が見つかった(2021年大英博物館にて)。Photo: Yui Mok/PA Images via Getty Images

盗難が疑われている中には、ラトランドで発掘された28枚の古代ローマ銀貨や銀塊などがある。発掘された品は法の定めに従って大英博物館に送られることになっており、問題の遺物もランカシャー州議会が管理する施設の安全な場所に保管されたのち、大英博物館での鑑定が行われる予定だった。

しかし、大英博物館がランカシャー州の州都プレストンの博物館に遺物の一部をロンドンへ移送するよう依頼した際、指定された物がないことが判明。あわてて調査を行ったところ、12セットの遺物とその保管ケースが紛失していることが明らかになった。

さらに、州議会による調査では他にも行方不明の遺物があることが分かり、10月に警察に届けが出された。ランカシャー州議会の文化サービス部門は、発見者へのメールで遺物の紛失を認め、何者かの行為によって起きたものだとしている。

この一件は、一般市民が発見した古代遺物を公的に記録するために作られた大英博物館の「Portable Antiquities Scheme(PAS、小型の古代遺物に関するスキーム)」や、遺物の発見を公正に管理するための政府の方針に影響を与える可能性がある。

2003年に開始されたPASは、金属探知機の普及で一般市民が古代コインなどの遺物を発見しやすくなったことを受け、重要な考古学的発見が学術研究者の目に触れないままになるリスクを避けようと設定されたものだ。

遺物の発見者は、各地の発見物連絡部署(通常は地方自治体の博物館が対応)へ自主的に報告するものとされる。そして、法律で「貴重な品」と判断された遺物は、さらに国家的に重要なものであるかどうかを判断するために、博物館や公的機関に購入の機会が与えられる。しかし、価値が認められず、拾得者所有のルールに基づいて発見者に返却されるケースがほとんどだ。

警察は、現在も窃盗の疑いのあるこの件の捜査を続けている。(翻訳:石井佳子)

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