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  • 2023.01.12

多民族国家シンガポールのパワフルなローカル・アートに注目! ART SG期間中に訪れたいアートスポット5選

1月11日、シンガポールマリーナ・ベイ・サンズ・エクスポ&コンベンション・センターで、ART SGが開幕した。会期中にぜひ見ておきたいローカルアートを紹介しよう。

Khairulddin Wahab《Flight of the Gods》(2022)Photo: Courtesy The Artist And Cuturi Gallery

世界中から多くのディーラー、アーティスト、コレクターらがART SGを目指してシンガポールに集結している。これに合わせて、シンガポールには香港で人気の現代アートギャラリー、WOAWギャラリーや東京のホワイトストーン・ギャラリーなど実力派のギャラリーが立て続けに進出。しかし見逃すべきでないのは、この風光明媚な港町に根ざした野心的で若々しいローカルなアートシーンがあることだ。

実は、ART SG開催期間である1月15日まで、市内の美術館やギャラリーだけでなく、島内のさまざまな場所で行われる毎年恒例のアートイベント、第11回シンガポール・アート・ウィークが開催されている。その中からバラエティに富んだ5つの展覧会を紹介しよう。(各見出しはアーティストもしくは展覧会名/ギャラリー名の順に記載) 

1. Khairulddin Wahab / キュートゥリギャラリー 

Khairulddin Wahab《Terra Nullius》(2022)Photo : Courtesy the artist and Cuturi Gallery

シンガポール・アート・ウィークで最もパワーに満ちているのは、2018年にユナイテッド・オーバーシーズ銀行のペインティング・オブ・ザ・イヤーに選ばれた32歳のシンガポール人アーティスト、 Khairulddin Wahabの個展「Shape of Land」だろう。シュールでありながら、ダイナミックで色彩豊かなアクリルペインティングは、植民地時代の地形図や、東南アジアの農民、蛇使い、風景を描いた版画や絵画、この地域の先住民の深い歴史や文化を参考に制作されている。 

1月29日まで。場所:キュートゥリギャラリー(61 Aliwal Street, Singapore 199937)

2. Nguyễn Quốc Dũng / ハッチ・アートプロジェクト  

Nguyễn Quốc Dũng《New Urban》(2021)Photo : Courtesy the artist and Hatch Art Project

ベトナム人アーティスト、Nguyễn Quốc Dũngのシンガポールで初の個展「The Lives of Others」も必見である。ベトナムの急速な経済発展により生じた、移民労働者やトランスジェンダーなど、社会的弱者の窮状をテーマにしており、パーソナルスペースが欠如する感覚や、社会的な規範の変化によるプレッシャーをドラマチックな油彩で表現している。作中で描かれた裸体は、フィルターやエアブラシといった視覚的効果を使っておらず、人間の肉体の弱さを思い起こさせる。 

2月12日まで。場所:ハッチ・アートプロジェクト(7 Yong Siak Street, Singapore 168644) 

3. 「For the House; Against the House: _____ is Dead」/タングリン・ショッピングセンター

「For the House; Against the House: _____ is Dead」(2022)の展示風景。Photo: Courtesy OH! Open House

楽しく魅力的なパブリックアートを意外な場所に展示するのが、シンガポール人キュレーター、Alan Oeiが発案したOH! Open Houseというプログラムだ。現在その一環として、再開発が予定されているショッピングモールにある複数の空き店舗で展示が行われている。シンガポール美術館の元キュレーターJohn Tungと、ナショナル・ギャラリー・シンガポールのシニアキュレーターAdele Tanの企画で、フィリピンのGeraldine Javier、タイのMit Jai Inn、そして現地シンガポールのMarla Bendiniといった有力アーティストの作品が集められた。今回は、再開発前のショッピングモールを舞台に、「美術館は死んだ」、「欲望は死んだ」という物議を醸しそうなテーマを掲げている。

1月15日まで。場所:タングリン・ショッピングセンター(19 Tanglin Road, #02-43B, Singapore 247909)

4. 「Creative Intersections: In the Year of the Rabbit」/フナン・モール

Yen Phangとテラリウム専門店Green Capsuleとのコラボ作品「Does the Rabbit Dream of the Artist?」(2022)の展示風景。Photo: Courtesy Funan

シンガポール人キュレーター、Khairuddin Horiによる最新のパブリックアートプロジェクトが開かれているのは、ナショナル・ギャラリー・シンガポール近くのショッピングモールだ。シンガポールの若い作家たちの斬新で刺激的なアートは、一見の価値がある。弁護士からアーティストに転身したYen Phangの作品は十二支にヒントを得たもので、以前はフナン・デジタル・モールと呼ばれた場所を意識したサイトスペシフィックなものだ。展示されているのはテラリウム専門店The Green Capsuleの店内で、様々な植物の鉢の中に、作家自身の手足の指や小さなウサギなどをかたどった小さな土の彫刻が混じっている。

2月5日まで。場所:フナン・モール(107 North Bridge Rd, Singapore 179105)

5. 「The Pierre Lorinet Collection: From Western Minimalism to Asian Political Abstraction」/ギルマン・バラックス

「The Pierre Lorinet Collection: From Western Minimalism to Asian Political Abstraction」(2022)の展示風景。キュレーションはEdward Mitterrand。Photo: Colin Wan/Courtesy Art Outreach Singapore

ART SGでアジア地域の一流作品が数多く展示される中、現代アートギャラリーが集まるギルマン・バラックスで開催されるのが「The Pierre Lorinet Collection: From Western Minimalism to Asian Political Abstraction」だ。大作を含みながらも落ち着いたキュレーションは必見と言える。主催は地元の非営利団体Art Outreach、キュレーションは、シンガポール在住のフランス人コレクターPierre Lorinetのアートアドバイザー、Edward Mitterrandが務めた。元英国軍の兵舎からアートとライフスタイルの発信地へと変身したギルマン・バラックスのギャラリースペースには、Pierre Lorinetのコレクションからチェン・ジェン、李禹煥ナム・ジュン・パイクドナルド・ジャッドなどが展示されている。シンプルな白い空間に置かれた作品は、インスタ映えすることまちがいなしだ。

1月29日まで。場所:ギルマン・バラックス(9 Lock Road, #02-21, Gillman Barracks, Singapore 208937)

from ARTnews

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