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  • 2023.05.12

今週末に見たいアートイベントTOP5: 3会場で同時開催「空山基展」、米アーティストのアジア初個展 アレックス・ダ・コルテ「新鮮な地獄」

関東地方の美術館・ギャラリーを中心に、現在開催されている展覧会の中でも特におすすめの展示をピックアップ! アートな週末を楽しもう!

アレックス・ダ・コルテ「新鮮な地獄」(金沢21世紀美術館)より、アレックス・ダ・コルテ《開かれた窓》2018 ©︎ Alex Da Corte studio

1. 嶋田美子「おまえが決めるな!」(オオタファインアーツ)

嶋田美子《中ピ連を招魂する(海)》2023年、インクジェットプリント、120 x 180 cm © Yoshiko Shimada Courtesy Ota Fine Arts

フェミニズムアートの急先鋒が、21年ぶりの新作個展

SDGsの達成目標のひとつとして、世界で掲げられる「ジェンダー平等」。そのずっと以前から、長らく日本のフェミニズムアートの急先鋒として活動してきた1959年生まれの嶋田美子が、実に21年ぶりの新作個展を開催する。嶋田は80年代後半から、女性と戦争をテーマに国内外で作品を発表してきた。女性の立場や取り巻く環境に眼差しを向け続けてきた作家が、今の世に問題提起するものとは。

本展で嶋田は、1972年に設立された「中絶禁止法に反対しピル解禁を要求する女性解放連合(中ピ連)」をフィーチャーする。♀印のついたピンク色のヘルメットをかぶって過激な活動を展開したことから、“色物”扱いされた中ピ連。しかし嶋田は、半世紀も前に性と生殖に関する女性の自己決定権を明確に主張した中ピ連を予言者に見立て、そのスピリットの復活を試みる。その決意表明を具現化した写真や油彩、映像などで「わたしのことをおまえが決めるな!」と叫ぶように。会期中はトークイベントも開催(5月20日16:00~17:30)。

嶋田美子「おまえが決めるな!」
会期:4月15日(土)~6月10日(土)
会場:オオタファインアーツ(東京都港区六本木6-6-9 ピラミデビル3F)
時間:11:00 ~ 19:00 


2. 大岩オスカール「My Ring」(アートフロントギャラリー)

《Light Shop 2》2018 キャンバスに油彩 178 x 138cm ©OSCAR OIWA STUDIO

大岩オスカールの集大成。28年間の過去作を新作「My Ring」シリーズに昇華

日系ブラジル人2世として生まれ、日本での活動を経て現在ニューヨークを拠点に活躍する大岩オスカール。本展で28年間の作品を再構成した新作「My Ring」シリーズを発表する。これまで日常生活の中から得たインスピレーションを絵画に表してきたオスカール。今回のシリーズでは、異なる時期に異なる場所を描いた自作から場面を抜き出し、コラージュするように新たな絵画に再構成した。各作品の真ん中には漆黒の川が縦断し、その流れがつながるように横並びに展示されている。

描かれるのは、日本の夏祭りで見た「金魚」やこれまでの作品に何度も登場してきた“昭和のモチーフ”の「屋台」、「ショベルカー」や様々な街並みなど。オスカールによると「いろんなものが混ざって自分の世界が出来ていく」のだという。油彩を中心に、新たに挑戦した3D技術による立体作品も並ぶ。作家の創作の根源に、より近づける展覧会となっている。

 大岩オスカール「My Ring」
会期:4月21日(金)~5月28日(日)
会場:アートフロントギャラリー(東京都渋谷区猿楽町 29-18 ヒルサイドテラス A棟)
時間:12:00 ~ 19:00 (土日祝は11:00~17:00)


3. 空山基「Space Traveler」(NANZUKA UNDERGROUND)

展示風景

ロボット彫刻が提示する「人間の身体性を超えた未来」とは

女性のヌード像を描くことで現代の美術の正統からは異端とされながら、その人体美をロボットに取り込んだ「セクシーロボット」シリーズなどで国内外に高い人気を誇る空山基。今回、3会場で同時に個展を開催する。メイン会場のNANZUKA UNDERGROUNDでは新作のロボット彫刻による大規模インスタレーションや、初のCG映像作品、大型絵画を披露。NANZUKA 2G(渋谷パルコ2F)、3110NZ by LDH kitchen(東京都目黒区青葉台1-18-7)でも、彫刻作品とペインティングを発表する。

空山は身体美をはじめ、「人間の欲望=生へのエネルギー」などへの関心を隠すことなく追究し、政治的、宗教的なタブーにも迫ってきた。アーティストという肩書を否定して、ラディカルな表現者という意味を込めた「エンターテイナー」を名乗る姿勢にも、作家の思いが垣間見える。本展では、「人間の身体性を超えた未来」という仮想の物語を提示する。人の知性とはなにか、身体、時間とは、という問いが相互に絡み合い、鑑賞者の想像力を刺激する。

空山基「Space Traveler」
会期:4月27日(木)~5月28日(日)
会場:NANZUKA UNDERGROUND(東京都渋谷区神宮前3-30-10)
時間:11:00 ~ 19:00


4. 高橋龍太郎コレクション「ART de チャチャチャ ー日本現代アートのDNAを探るー」展(WHAT MUSEUM)

Photo by Keizo KIOKU WHAT MUSEUM 会場風景 高橋龍太郎コレクション「ART de チャチャチャ ―日本現代アートのDNAを探る―」展

豪華コレクションで日本現代アートを総覧、高橋龍太郎の審美眼

その審美眼をもって、日本の現代アートシーンを定点観測し続けてきたコレクターの高橋龍太郎。1997年から本格的に始めた作品収集は現在3000点を超え、国内外の美術館でコレクション展が開催されてきた。その現代アートの多様性を包括的に見ることができる作品群から、今回はWHAT MUSEUMが33作家の40点を厳選。その約半数がコレクション初出展となる。焦点を当てるのは、日本の伝統文化や価値観を継承しながらも新たな独自の表現にたどり着いた作家たち。各作品を組み合わせるなど、展示空間にも演出を加えた。

岡村桂三郎の迫力ある大型作品には、杉本博司、井上有一、操上和美らの作品が共鳴。光と陰の中に浮かび上がる特別な展示空間を演出する。見附正康の大皿や山口英紀の水墨画、須田悦弘の彫刻などの超絶技巧。美術運動「もの派」の代表作家、榎倉康二、菅木志雄、李禹煥らの作品も並ぶ。初出展作には、華雪のインスタレーション作品や、束芋の映像作品、小谷元彦の彫刻作品など。その他の出展作家に、青山悟、岩崎貴宏、小沢剛、金子富之、熊澤未来子、桑田卓郎鴻池朋子、指田菜穂子、関根伸夫、田代裕基、天明屋尚、橋本雅也、畠山耕治、町田久美、松井えり菜、村山悟郎、森村泰昌、山口藍、山口晃、横尾忠則。

高橋龍太郎コレクション「ART de チャチャチャ ー日本現代アートのDNAを探るー」展
会期:4月28日(金)~8月27日(日)
会場:WHAT MUSEUM(東京都品川区東品川 2-6-10寺田倉庫G号)
時間:11:00 ~ 18:00(入場は1時間前まで)


5.  Alex Da Corte Fresh Hell アレックス・ダ・コルテ「新鮮な地獄」(金沢21世紀美術館)

アレックス・ダ・コルテ《開かれた窓》2018 ©︎ Alex Da Corte studio

世界的に注目されるアメリカ人アーティストが、アジアの美術館で初の展覧会

近年世界的に評価が高まっているアメリカ人アーティストのアレックス・ダ・コルテの、アジアの美術館では初めての展覧会。1980年生まれのダ・コルテは、人気アニメのキャラクターや美術史上の人物に扮装し、メディアを通して伝えられる「イメージ」を問う作品で知られる。テレビやコミックといった大衆文化などに着想したその表現は実に多様で、映像のほか、彫刻や絵画、インスタレーションなども駆使。今展では最新作を含む11点の映像作品が紹介され、その多くが大きなテレビを模した箱に収めたインスタレーションとして展開される。

60分のオムニバス映像作品《ROY G BIV(ロイ・ジー・ビヴ)》では、ダ・コルテが、「現代アートの父」マルセル・デュシャンに扮装。デュシャンが演じた別人格のローズ・セラヴィや、コンスタンティン・ブランクーシの彫刻《接吻》などのモチーフを演じ分けながら展開する。アメリカ特有のポップな色彩と見覚えのあるキャラクターによる作品は、楽しげながらも消費文化の裏側に視点を向けさせ、現実世界の不安や孤独を呼び起こさせる。他に人形やおもちゃといった、作家のイメージの根源となってきた幼少期からの収集品なども展示。

Alex Da Corte Fresh Hell アレックス・ダ・コルテ「新鮮な地獄」
会期:4月29日(土・祝)~9月18日(月・祝)
会場:金沢21世紀美術館(石川県金沢市広坂1-2-1)
時間:10:00 ~ 18:00(金曜と土曜は~20:00)

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