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ジョン・ケージやラウシェンバーグら1960年代前衛芸術の貴重な記録写真をノースウェスタン大学が取得

ジョン・ケージロバート・ラウシェンバーグ、ヨーコ・オノ、トリシャ・ブラウン、ナム・ジュン・パイクらのパフォーマンスを写真で見ることができるのは、ピーター・ムーアのおかげだ。

ピーター・ムーア《ヨーゼフ・ボイスの「Infiltration Homogen for Cello (チェロのための等質浸潤)」》。写っているのはパフォーマンスを行うシャーロット・モーマンとアシストの小杉武久。1966年の第4回ニューヨーク・アバンギャルド・フェスティバル、セントラルパーク》(1966) ©Northwestern University/Peter Moore Photography Archive, Charles Deering McCormick Library of Special Collections, Northwestern University Libraries

1960年から1993年に亡くなるまで、ムーアは米国で活動する前衛芸術家たちを写真に残し続けた。パフォーマンスという、奇妙で先端的な一瞬の出来事を捉えた貴重な記録だ。

そのムーアの膨大なアーカイブが、イリノイ州エバンストンのノースウェスタン大学図書館に永久保存されることになった。同大学は、コンタクトプリント1万5000点、カラースライド5000点、パンフレットやチケットなどの印刷物のほか、作品の版権も取得している。このニュースが報じられたのは、ニューヨークのPaula Cooper Gallery(ポーラ・クーパー・ギャラリー)でムーアの回顧展が始まる少し前のことだった(回顧展の会期は2月22日〜3月26日)。

ノースウェスタン大学チャールズ・ディアリング・マコーミック図書館の学芸員、スコット・クラフトは、メール取材に答えて次のように述べている。

「ピーター・ムーアを本図書館のアーティスト・アーカイブ・リストに加えることは、長年の夢でした。この膨大な作品群は、ピーター・ムーアの記念碑的業績というだけではなく、本学に所蔵されているジョン・ケージやディック・ヒギンズ、フィリップ・コーナー、ジェフリー・ヘンドリックスといったアーティストのアーカイブをつなぎ合わせる背骨の役割を担うもの。将来の研究者にとって、非常に充実した資料の集積となるでしょう」

ノースウエスタン大学に収蔵される写真には、ハプニングと呼ばれる伝説的イベントを記録した画像もある。その中に含まれる「9 Evenings: Theatre and Engineering(9つの夕べ:演劇とエンジニアリング)」は、1966年にラウシェンバーグ、イボンヌ・レイナー、スティーブ・パクストンなどのアーティストが参加した「Experiments in Art and Technology(アートとテクノロジーの実験)」シリーズ初のイベントだ。

また、ナム・ジュン・パイクヨーゼフ・ボイスの作品に参加した実験的チェリストでパフォーマンスアーティストのシャーロット・モーマンや、フルクサス運動に関わったアーティストの活動記録も見ることができる。こうしたムーアの写真には、クリエイターたちが生活と芸術を融合させた先駆的かつ奇抜な方法がよく捉えられている。

アーカイブにはまた、ムーアがニューヨークのペンシルバニア駅解体を4年間にわたり撮影したシリーズ作品や、商業的作品も含まれている。(翻訳:平林まき)

※本記事は、米国版ARTnewsに2022年2月22日に掲載されました。元記事はこちら

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