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  • 2023.06.09

今週末に見たいアートイベントTOP5: 片山真理が新作を披露「CAVERN」、経済と愛のつながりをアートで検証「Economy and Love」

関東地方の美術館・ギャラリーを中心に、現在開催されている展覧会の中でも特におすすめの展示をピックアップ! アートな週末を楽しもう!

近藤亜樹「わたしはあなたに会いたかった」(シュウゴアーツ)より、《I Love You》2023, acrylic on canvas, 227.3×363.6cm Copyright the artist, Courtesy of ShugoArts, Photo by Shigeo Muto

1. Borrowed Landscapes(BLUM & POE)

「Borrowed Landscapes」 Blum & Poe(東京)での展⽰⾵景画像、2023 年 © Friedrich Kunath, Masayoshi Nakamura, Kenjiro Okazaki, Akane Saijo, Magdalena Skupinska, Daichi Takagi, Courtesy of the artist and Blum & Poe, Los Angeles/New York/Tokyo Photo: SAIKI

中村正義、岡﨑乾二郎、フリードリッヒ・クナスら6作家が、ギャラリーの窓外にも生みだす新たな文脈

ギャラリー「BLUM & POE」の窓一面に広がるのは、明治神宮の本殿を囲む森。本展では、この景色をただの借景とせずに、フリードリッヒ・クナス(ドイツ)、中村正義(1924-1977)、岡﨑乾二郎西條茜、マグダレナ・スクピンスカ(アルゼンチン)、髙木大地の作品を能動的に関わらせていく。人々が神の宿りを感じ、畏敬の念の対象としてきた自然と、物故作家を含めた新旧6作家が交わる時、窓の外の「ランドスケープ」には新たな文脈が生みだされる。

革新的な日本画で知られる中村正義の作品からは、肺の病を患っていた1955年ごろに描かれたとされる風景画を紹介。病床から外の世界を渇望するような心象風景が垣間見えるという。1989年生まれの西條茜は、釉薬のグラデーションが遠景の森の木々を思わせる、神社の手水鉢のような造形のセラミック作品などを出展。マグダレナ・スクピンスカは、神宮の森にも植えられているクスノキの粉末を画材に使用し、キャンバスの上下に塗り込めた。

Borrowed Landscapes
会期:5月13日(土)~ 6月24日(土)
会場:BLUM & POE(東京都渋谷区神宮前1-14-34 原宿神宮の森5F)
時間:12:00 ~ 18:00 


2. Economy and Love(KOTARO NUKAGA)

展示風景

経済と愛は通じているのか? 2人の海外アーティストが作品を通じて検証

パリポンピドゥー・センターでの大規模インスタレーションなど、世界で活躍するメキシコ生まれのステファン・ブルッゲマンと、スペイン出身で気鋭のコンセプチュアル・アーティストのオリオール・ヴィラノヴァの2人展。親交の深い両者が、「economy(経済)」を「エモーショナルなもの=love(愛)」として捉えることが可能なのかということを、作品を通じて検証する。

ブルッゲマンは、SNSや街中にあふれる広告などのテキストを作品化してきた。ネオンサインなどを素材に、鮮やかな色彩のポップな作品に仕立てつつ、日々加速するデジタル社会に向けた鋭い眼差しを潜ませる。本展では、古来より装飾や祭礼に使われる一方で、経済の象徴でもある「金」に注目。支持体に金箔を張りつけ、ポストの投函口のような窓を設けた新作シリーズ「untitle view」を展示する。検索バーにも見えるこの窓は、実は「I(わたし)」の文字を横にしたもの。その意図とは……。

ほぼ毎週蚤の市に通い、コレクションしたポストカードを作品に昇華するスタイルのヴィラノヴァ。ペインティングシリーズ「Economical Poem」には縦2列に数字が並び、一番下は同じ数字で終わる。左列は蚤の市で売り手が提示した値段、右はヴィラノヴァが交渉した希望価格だ。ただの符号であった数字は、このことを知った瞬間に、その場で交わされた生のやり取りを想像させるコードとなる。

Economy and Love
会期:5月20日(土)~ 7月8日(土)
会場:KOTARO NUKAGA(東京都港区六本⽊6-6-9 ピラミデビル2F)
時間:11:00 ~ 18:00


3. 荻野夕奈「Silent Tales」(ミヅマアートギャラリー)

《p-090223_1》(2023)パネルに油彩、190 x 450 cm Photo/MIYAJIMA Kei ©︎OGINO Yuna Courtesy of Mizuma Art Gallery

具象から半抽象へと制作過程でイメージを変容。最後に立ち現れるものとは

花や人物など身近なモチーフを描く荻野夕奈は、国内外での作品発表に加え、商品ラベルや新聞小説の挿絵などに活躍の場を広げる注目の画家だ。キャンバスに表される半抽象画は、具体的な描写から抽象的な形態へと、描いていく過程で徐々に再構成していく。具象の痕跡を残しつつ、最終的に様々なイメージの形の連鎖や、軽やかな色のリズムが立ち現れる。荻野が近年よく描くのが人物のヌード。男性目線のエロティシズムを排除しながら、命の存在や儚さに潜むエネルギーを、しなやかなタッチで表現する。

本展では、「通り過ぎていった風景」からインスピレーションを受けたものや、その背景にある「言葉のない静止したイメージ」を描いた絵画を、展示空間全体で一つの物語になるように構成。1.9×4.5メートルの大作も登場する。荻野は、会場の中央で何かを感じとってもらえたらと話す。6月10日(土)17時から、荻野と美術ジャーナリスト・藤原えりみのトークイベントを開催。

荻野夕奈「Silent Tales」
会期:5月31日(水)~ 6月24日(土)
会場:ミヅマアートギャラリー(東京都新宿区市谷田町3-13 神楽ビル2F)
時間:12:00 ~ 19:00 


4. 片山真理「CAVERN」(GALLERY ETHER)

《Calypso #001》(2022)C-print ©Mari Katayama

木村伊兵衛写真賞の作家が、義足の両足から「身体と社会」をより深く考察した4年間

先天性の四肢疾患により9歳で両足を切断した片山真理。自身の体を模した手縫いのオブジェなどを用いて演出したセルフポートレイトなどを制作し、身体について深く考察してきた。2020年には木村伊兵衛写真賞を受賞。近年では、義足でも履けるハイヒールを特注して街やステージに立つ「ハイヒール・プロジェクト」を再開し、“選択の自由”を社会に示している。

今回、自身が育った群馬県に構えたアトリエでこの4年間に制作してきた、新作を含む作品とドローイングを披露する。パンデミック下で身体と作品の関係性や、それらを取り巻く社会について、より集中して取り組んできたという。片山はこの時間を「洞窟のよう」だったと語り、古代ギリシャの叙事詩の中で、洞窟でともに暮らした海の女神・カリュプソと英雄・オデュッセウスへ思いを馳せる。片山が自己の内面との対話で何を感じてきたのか、会場で確かめたい。

片山真理「CAVERN」
会期:6月6日(火)~ 24日(土)
会場:GALLERY ETHER(東京都港区西麻布 3-24-19 三王商会西麻布ビル1F-B1F)
時間:12:00 ~ 19:00(15:00 ~16:00を除く)


5. 近藤亜樹「わたしはあなたに会いたかった」(シュウゴアーツ)

《I Love You》2023, acrylic on canvas, 227.3×363.6cm Copyright the artist, Courtesy of ShugoArts, Photo by Shigeo Muto

孤独な闘いを繰り返し、たどり着いたシンプルな答え

1987年生まれの近藤亜樹は、大胆な構図とエネルギーに満ちた絵画が特徴のアーティスト。平面作品を手掛ける若手作家の登竜門として知られる「VOCA展」では、2021年に奨励賞を受賞している。「描くことは生きることそのもの」と言い、子どものころから自分が見たいことや物を描き起こすことで、それらに出会い、世界を理解してきた。それは、会いたい世界をちゃんと描けるのだろうかという、真っ白なキャンバスを前にした孤独な闘いの繰り返しでもあったという。

展示は、3.6メートルの大作をはじめとする新作18点で構成。今回作品に描いた人間や動植物、ぬいぐるみなどもみな、家族や友人、過去や未来の自分など “誰かに会いたい気持ち” を抱えているのだと近藤は説明する。「わたしはあなたに会いたかった そのきもちはとてもシンプルで とても強くて大きくて 私は描くことできづいたのです」と、制作についてコメントしている。

近藤亜樹「わたしはあなたに会いたかった」
会期:6月10日(土)~ 7月22日(土)
会場:シュウゴアーツ(東京都港区六本木6-5-24 complex665 2F)
時間:11:00 ~ 18:00

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