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AIが新たなナスカの地上絵を発見! 「これまで20年かかっていたものが1年で済む」山形大学の新手法

AI(人工知能)による解析で、新たに4つのナスカの地上絵が発見された。これまでより21倍速く地上絵の候補を特定できるなど、山形大学による研究成果が学術誌に発表されている。

ペルー・ナスカで丘の中腹に描かれた猫を思わせる地上絵。Photo: Johny Islas/Peru's Ministry of Culture-Nasca-Palpa, via Associated Press

南米ペルーの世界遺産、ナスカの地上絵は、紀元前100年から紀元後300年頃に描かれたと見られ、人間やリャマのようなラクダ科の動物、ネコ科の動物、鳥、シャチ、ヘビなどの絵がある。地上絵が描かれた目的には、神を描いたもの、灌漑のため、占星術の暦などさまざまな説があるが、はっきりしたことはまだ解明されていない。

約1世紀前に地上絵が発見されたのは、航空技術の発達によるものだ。これまでは、航空写真から地上絵の候補を探し、実際に現地調査することで特定していた。しかしこれでは時間がかかる。そこで山形大学のナスカ研究所と日本IBMの調査チームは、ディープラーニング(深層学習)技術を用いて、AIで地上絵を探す実証実験を始めた。

専門家によると、ディープラーニングは「画像、音声、言語などのパターン分析において、大きな力と柔軟性を発揮する。考古学分野では、出土品の図像や文書、文字の分析に使われている」という。

課題とされたのが、地上絵の種類が多岐にわたることだ。また、ディープラーニングでは通常大量のデータを学習させるが、地上絵は数が少なく、1つしかない絵もあるため、共通の特徴を認識することが難しい。そのため、既に発見されている絵を頭や脚などの部位に分割したうえで類似性を探すアプローチを取った。

現地調査で新たに確認された4つの地上絵は、棒のようなものを持った人型、大きさが780メートル以上もある一対の足(または手)、魚、鳥を描いたものだ。

「肉眼に頼るより格段にスピードアップできる。これまで20年かかっていたものが1年で済む」と山形大学の研究者は述べている。「現地調査とAIを組み合わせたこの新しいアプローチは、考古学の未来にとって有益なものになるだろう」

同大学の研究チームは、昨年末にも航空レーザー測量やドローンを用いて、168点の新たな地上絵を発見している。(翻訳:石井佳子)

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