メキシコ政府のファインプレー! マヤ文明の球技のトロフィーをオークションから救済
精巧な彫刻のあるU字型の石のトロフィーがメキシコに返還された。オーストリアのオークションハウスで、あやうく競売にかけられるところをメキシコ政府が主導して回収に成功した。
牛の首にかける「くびき」に似た形のこのトロフィーは、堆積岩を彫って作られている。メキシコから中央アメリカにかけてのメソアメリカと呼ばれる地域で行われていたペロタという球技で、選手が腰に付けた防具を表していると見られる。
メキシコ政府の声明によると、この歴史的遺物は、同国の外務省および文化省、メキシコシティの国立人類学歴史学研究所(INAH)の協力の下、オークションにかけられる直前に在オーストリアのメキシコ大使館によって回収されたという。
ペロタという球技は、マヤ文明をはじめとするメソアメリカ地域の文明で、娯楽あるいは宗教的なものとして行われていた。2、3人のチームが、腰、肩、膝、肘を使い、石壁の高い位置に設置された石の輪にゴムのボールを通すことで得点が決まる。非営利の教育組織であるワールド・ヒストリー・エンサイクロペディアの記事によると、ペロタが行われた長方形の中庭は、都市の「聖域」とされる場所にあることが多い。
2018年にアンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール大統領が就任して以来、メキシコ当局は、欧米のオークションハウスや美術館に対して略奪文化財の返還を積極的に求めてきた。2021年にドイツで、また昨年パリで行われた先コロンブス期遺物のオークションを阻止することはできなかったが、アメリカ、ベルギー、オランダからの文化財返還を実現した。(翻訳:石井佳子)
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