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アメリカのユネスコ復帰の目的は、AI分野における中国牽制。ユネスコの「自由な世界」ビジョンを推進

6月30日、パリの本部で開催された国連教育科学文化機関(ユネスコ)の臨時総会で、アメリカの再加入が承認された。2018年のトランプ政権時に脱退して以来の復帰となる。

2019年11月13日、パリのユネスコ本部で開催された第40回国連教育科学文化機関(ユネスコ)会議の様子。Photo: Anadolu Agency Via Getty Images

ジョー・バイデン大統領は2023年初めにユネスコ復帰の意向を表明していた。AP通信によると、その理由は、ユネスコが現在取り組んでいる、人工知能(AI)などの先端技術の政策決定に対して中国の影響力が強まっていることに対する懸念だという。

アメリカのジョン・バス国務次官は3月、記者団に対して、復帰について次のように説明した。

「中国が世界的に影響を与える状況で、われわれの不在が生み出している損失に対処しなければなりません。そういった例は、ユネスコが目指す自由な世界というビジョンを推進する上で、ほかにも数多くあります」

アメリカとユネスコは過去40年にわたり、冷戦やイスラエルのパレスチナ占領など、財政やイデオロギー面で定期的に衝突してきた。1983年にロナルド・レーガン元大統領はアメリカをユネスコから脱退させたが、2002年にジョージ・W・ブッシュ元大統領が再加入を実現。そして2018年のトランプ政権下、ユネスコが反イスラエル的であるとして再び脱退した。

7月2日にユネスコが発表したプレスリリースで、オードリー・アズレイ事務局長は、アメリカのユネスコ復帰について、「ユネスコと多国間主義に対する強い信頼の証です」と称賛。「文化、教育、科学、情報という中心的なテーマに加え、今取り組んでいる課題についても共に考えていきたい」と話した。(翻訳:編集部)

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