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デイヴィッド・マルティネス(David Martinez)

拠点:イギリス・ロンドン、アメリカ・ニューヨーク
職業:投資アドバイザー
収集分野:近現代アート

フィンテック・アドバイザリー社を創業したデイヴィッド・マルティネスは、2006年にジャクソン・ポロックの《No.5, 1948》を、1億4千万ドル(約203億円)という記録的な落札額で手に入れたことで知られる。ただし、本人はこの作品の所有を否定している。その8年後、マルティネスはクリスティーズでフランシス・ベーコンの《Portrait of George Dyer Talking》(1969)を7000万ドル(約102億円)で売却。また、ダミアン・ハーストなど一流アーティストの作品を所有しているとされる。

オンラインメディアのインターナショナル・ビジネス・タイムズによると、マルティネスは「同じメキシコの大物実業家で、トップ200コレクターズの1人であるカルロス・スリムに倣い、『世界一の大富豪』を目指していると周囲が口を揃えて言っている」という。しかし、メキシコのメディアで「幽霊投資家」と呼ばれるほど、彼に関する情報は表に出てこない。

マルティネスは、経済が低迷する市場への投資で資産を築いてきた。1994年にアルゼンチ国債を8億3400万ドル(約1200億円)で購入したことが功を奏し、現在はアルゼンチンのメディアグループ、ケーブルビジョンの40%の株式を保有している。

2007年に購入したマーク・ロスコの《無題》(1961)をめぐり、マルティネスは2010年に「レッド・ロスコ」と呼ばれる法的紛争に巻き込まれることになった。民事訴訟を起こしたのは、長年トップ200コレクターズに名を連ねるマルグリット・ホフマンだ。ホフマンは2006年、「全関係者は、この取引についてどんな情報も永久に漏らさないよう最大限の努力をすることに同意する」という合意のもと、ロスコ作品を売却した。その後、ホフマンは買い手のスタジオキャピタル社(タックスヘイブンである中米のベリーズに登記がある会社で、マルティネスが顧問を務める)を相手に訴訟を起こした。この作品がサザビーズのオークションで、3140万ドル(約46億円)で売却されたとき、その来歴からホフマンが所有していたことが明るみに出たことがきっかけだった。結果、ホフマンは損害賠償として170万ドル(約2億5000万円)を勝ち取った。


注:記事中の円換算額は、US版ARTnewsで2022年版トップ200コレクターズが発表された2022年10月時点の為替レートによる。

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