「人生が破壊された」──ロシアの大富豪アートコレクターがEUの制裁に抗議
ウクライナ侵攻後、国際的な制裁の対象となっていたウクライナ生まれのオリガルヒ(ロシアの新興財閥)でアートコレクターのミハイル・フリードマンが、ヨーロッパの裁判所に出廷した。
ウクライナ侵攻後、国際的な制裁の対象となっていたロシアのオリガルヒでアートコレクターでもあるミハイル・フリードマンが先週、ヨーロッパの裁判所に出廷した。フリードマンの代理人によると、彼は自身の財政を狙った欧州連合(EU)の政策によって人生が「破壊された」と語ったという。
一方、法廷での審問でフリードマンの弁護団は、彼がロシア連邦のウラジーミル・プーチン大統領と関係することで利益を得ており、ウクライナにおける同国の軍事活動を財政的に支援していたというEUの主張を否定。ブルームバーグによると、弁護士団のティエリ・マレンベールは、公聴会の中でEU側の証拠を「信用できない」「何も根拠がない」と述べたという。
フリードマンはソビエト連邦後のロシアで、最大の民間投資グループであるアルファ銀行の共同設立者として巨万の富を築いた。2013年に140億ドル(現在のレートで2兆14億円)で国営企業ロスネフチに売却された石油会社、TNK-BPの株主でもある。
2022年2月にロシアがウクライナに侵攻すると、ロシア政府とつながりのあるロシアのオリガルヒを糾弾するために結成されたEUの国家犯罪対策庁の「クレプトクラシーと闘う細胞」によって、彼のロンドンの自宅は家宅捜索された。その際もフリードマンは、制裁逃れや金融詐欺の疑惑を否定しており、2023年1月、捜査令状が法的に無効であることが判明したため、同庁はフリードマンに関する捜査の一部を取り下げている。
オリガルヒの多くは芸術のパトロンでもある。彼が設立に携わったロンドンの投資企業レターワン・ホールディングスは、テート・モダンで2019年に行われたナタリア・ゴンチャロワ回顧展を含む様々な美術展のスポンサーを務めている。また、フリードマン自身、ガゴシアン・ギャラリーの顧客であり、これまで何度もオークションに足を運んでいる。ニューヨーク・ポスト紙によると、彼はメガディーラーを通じて、2013年に3800万ドル(現在のレートで54億3000万円)のウォーホル作品を購入した。
ロシアのウクライナ侵攻後の2022年2月にEUから制裁を受けたフリードマンは、レターワンを退任。制裁により、同社の投資先から送られる配当金が停止されたため、以降はイギリス政府から支給された俸給で生活していたという。
フリードマンはビジネスパートナーのペトル・アヴェンやロマン・アブラモビッチとともに、彼らの資産や国際的な移動に関する制裁を巡り、法廷闘争を繰り広げている。(翻訳:編集部)
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