ストーンヘンジ近くの地下トンネル建設は「不可解で恥ずべき行為」。遺産保護団体が英政府に抗議
世界遺産のストーンヘンジ近くで計画されている地下トンネル建設が、遺産保護団体の反対にもかかわらず、政府によって正式に承認されたとBBC
などが報じている。地下トンネルの建設は、ストーンヘンジ付近の交通渋滞を減らし、観光客の利便性を高めることを目的としている。ロンドンとイギリス南西部を結ぶ幹線道路の再開発プロジェクトの一環であるこのトンネル計画には、約17億ポンド(約3000億円)が投じられる。
考古学研究者や世界遺産関連団体は、今も新たな遺物が発見され続けているストーンヘンジに近い場所でのトンネル建設は、遺跡の未発掘部分を破壊する可能性があるとして、以前からこの計画に反対してきた。2020年に下りた当初の計画許可は、反対派の運動で2021年に高等法院によって却下されている。
そのため計画は長らく遅れていたが、7月中旬にマーク・ハーパー運輸相によって再び承認された。
2021年にユネスコは、トンネルが建設された場合、ストーンヘンジは危機遺産に登録されることになると警告。報告書によると、「(同遺跡の顕著な普遍的価値)、特に同遺跡の完全性に対する非常に有害かつ不可逆的な影響を避けるためには、このインフラプロジェクトの大幅な変更が必要」になるという。
トンネル計画反対運動の中心的存在は、環境、考古学、遺産保護団体で組織されるストーンヘンジ・アライアンスだ。同アライアンスの嘆願書や法的な異議申し立ては、これまでも計画承認の遅延につながっている。
今回の政府承認に対するストーンヘンジ・アライアンスのプレスリリースには、次のように書かれている。
「保守党政府は、この国の財政状態が危機に瀕している今、イギリスで最も重要かつ神聖な先史時代の景観を損ねるような無用の長物に巨額の費用を投じようとしている。ストーンヘンジとその周辺の世界遺産登録エリアにトンネルを貫通させるというマーク・ハーパーの決定は、不可解であると同時に恥ずべきものだ。この計画が、イギリス考古学の象徴であるストーンヘンジの景観に『永久的かつ不可逆的な損害』を与えることに疑いの余地はない」
ストーンヘンジ・アライアンスは現在、プロジェクトを延期あるいは中止するために政府を再度提訴できるか、法律家による専門的な助言を得るための支援資金を募っている。(翻訳:石井佳子)
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