ウォーホル代表作に殴り書き。続く環境活動家の抗議行動に美術館長協会が声明を発表
11月8日、オーストラリアのキャンベラにあるオーストラリア国立美術館で、2人の気候変動活動家が、アンディ・ウォーホルの「キャンベル・スープ」シリーズに青いインクで殴り書きをした。
SNSに投稿された映像には、2人の活動家が、額装されたウォーホルの代表作《キャンベル・スープ I》に手を接着しようとしている様子が映されている。
今回抗議行動を行ったのは、 A22ネットワークの一員であるStop Fossil Fuels Subsidies。彼らのプレスリリースによると、オーストラリア政府による天然ガスや石炭などの産業への財政支援を終わらせることが目的だという。同国は世界最大の石炭輸出国であり、2021年の電力の71%が化石燃料によるものである。
そして、参加した活動家の1人は、ボニー・カッセンという3児の母だと明かした。彼女は抗議行動中に、「アンディ・ウォーホルは、代表的な版画シリーズで狂った消費社会を描写した」「化石燃料の企業が記録的な利益を上げる一方で、子供たちのために薬か食料のどちらかを選ばなければならない家庭がある 。それなのに、私たちの政府は化石燃料産業に毎分2万2千ドルもの補助金を出しているのです」と主張していた。
この抗議行動は、気候変動活動家がヨーロッパ各都市の主要な美術館や博物館で行った同様の行動に続くものだ。6月以降、フェルメールの《真珠の耳飾りの少女》、ゴッホの《ひまわり》、モネの《積みわら》、ゴヤの《裸のマハ》などの代表作が立て続けにガラスやフレームに液体をかけられたり、額に手を糊付けされたりしており、 そのほとんどはイギリスの気候変動活動団体ジャスト・ストップ・オイルが行っている。
これまでの抗議活動に関するビデオや声明では、気候変動による災害を悪化させる原因に対して、政府が行動を起こしていないことを強調するために行っているのであり、絵画や彫刻を破損することが目的ではないことが説明されている。
それら一連の抗議活動に対して、今月初め、米国とカナダの著名な美術館が加盟する美術館長協会が以下の声明を発表した。
「当協会は常に、動機が政治的、宗教的、文化的なものであろうと、芸術作品への攻撃は正当化されないと明言してきました。アートは時間や国境を越えて、世界中の人々が表現してきた創造性を強調するものであり、私たちが共有している人間性を表現しているのです」「いかなる目的であれ、芸術を攻撃することは、こうした絆を損なうものです。そのような抗議は誤った方向に向かうものであり、結果は手段を正当化するものではありません」(翻訳:編集部)
*from ARTnews