80年代アニメの女性キャラに新たなナラティブを与える──キム・ミンヒ【韓国現代アートシーンの現在地 #1】

※ 2023年9月12日 UPDATE
本記事で紹介しているアーティストの作品が著作権侵害ではないかというご指摘をいただきました。編集部で詳細を確認せずに記事を公開したことについて、関係各位および読者のみなさまにお詫びいたします。現在、詳細を確認しております。また、ARTnews JAPAN編集部として本件を重く受け止め、執筆者名を編集部に変更しております。

昨年に引き続き今年も9月に国際的アートフェア「FRIEZE」が開催されるなど、ますます盛り上がりを見せる韓国アートシーン。その生態系を考える上で、インディペンデントなアーティストの存在を無視することはできない。オルタナティブな実践に取り組む若手アーティストたちの声から韓国アートシーンの現在地に迫る本連載、第1回は1980年代のアニメやサイバーパンクSFを参照しながら新たな女性像を立ち上げるキム・ミンヒのもとを尋ねた。

Q1. あなたの作品はどんなコンセプトに基づいたものですか?

私の作品は、1980〜1990年代のマスメディア、日本のアニメーション、サイバーパンクコミックから主にインスピレーションを得ています。なかでも多用しているのが、女性キャラクターのイメージです。こうしたイメージを扱いながら、過去から未来を見つめる感覚、あるいは逆に未来から過去を見つめる感覚を呼び起こすような絵画をつくろうとしています。

スクリーンの中で過去の物語に囚われているキャラクターをキャンバスへ移すことで、新しいナラティブを与えられるんです。だから私はあくまでも「レトロ」ではなく未来を追求しているつもりです。当時のアニメーションが想像した「未来」はすでに訪れているわけで、過去のものとなったキャラクターを再び今日的な文脈へと組み込むこと──ノスタルジアの対象となるイメージから、未来的であり同時代的な想像力を引き出すことを目指しています。

Q2. あなたのスタイルはどのように形成されたものですか?

もともとiPhoneやMacbookのように小さなスクリーンでアニメーションを見ることが多かったのですが、その経験をキャンバスの大きな画面へ移したことで予想外の喜びが生まれたことがきっかけです。スクリーン上のキャラクターをデジタルプログラムへと変換し、再びキャンバスに移していくプロセスを通じて、もともとは平面的なキャラクターを絵画の物質性によって厚みのある形で表現しようと考えるようになりました。また、1980〜1990年代のサイバーパンクアニメやマンガに出てくる金属やガラス、プラスチックなどの質感を想起させるような要素をキャラクターへ付与することもありますね。

Q3. あなたはどのようにアートを学びましたか? 韓国のアート教育はどのような状況にあると思いますか?

大学ごとに異なるカリキュラムを有しているため、特定の傾向があるとは言いがたいですね。個々人が能力を発揮する上で、韓国はそこまで悪い環境ではないように思います。私は10歳からずっと美術の試験を受けていて、美大と大学院を卒業し、座学も実技も続けてきました。

Q4. あなたはどのような活動形態をとっていますか?

現在はギャラリーに属さずひとりで活動しています。かつてギャラリーに所属していたときは、グループ展やアートフェアに参加することもありましたし、そのときはフィーを分け合っていました。

Q5. 韓国のアートシーンに多様性を感じますか?

ほかの国と同様、韓国のアートシーンにおいても多様性に対する意識は高まっていると感じます。クィアやマイノリティをテーマにしたアート作品もあれば、人新世のようなテーマについてもさまざまな議論が行われ、展示を通じて表現される機会も増えています。

Q6. アートやアーティストは韓国の社会とどのようにつながっていますか?

アーティストたちは常にこの社会で起きている同時代的な出来事からインスピレーションを得ていますし、ときには反抗することもあります。それぞれの方向で各自のコミュニティと向き合いながら作品をつくろうとしていると思います。

Q7. 韓国のアートシーンにはどんなコミュニティがあると思いますか?

韓国ではさまざまな運動が行われていて、コレクティブもたくさん生まれてきましたし、同時に消滅してしまったものもたくさんあります。短命なコミュニティもあれば複合的な要因によって長期的に続くコミュニティもあり、私自身も混沌とした状況に置かれていると感じます。

Q8. 海外のアートシーンをどのように捉えていますか?

個人的に好きな海外のアーティストはたくさんいますし、インスピレーションを与えられることも多いです。海外のアーティストと展示を行えるのは幸せなことですし、これからも積極的に展示に参加していきたいですね。

Q9. 将来的にはどんな活動を行っていきたいですか?

自身の作品をきちんと発展させるとともに新たな表現を探求しながら、自分自身を恥じることがないような活動を心がけていきたいです。

Q10. 韓国のアートシーンは今後どう変わると思いますか?

韓国のアートシーンでは常に新たな変化が起きていますし、これからはさらに多くの変化が生まれていくんじゃないでしょうか。よりシーンが多様化し、ポジティブな変化が増えていくことを期待しています。


キム・ミンヒ|MINHEE KIM

1991年韓国生まれ。ソウルを拠点に活動中。近年の主な個展に「HAUS DOSAN LIVE ZERO」(GENTLEMONSTER、韓国・ソウル、2022年)、グループ展として「Funky Function」(Daegu Art Museum、韓国・大邸、2022年)、「Beyond Human: Exploring Cyborg Body and technology」(L.U.P.O. gallery、イタリア・ミラノ、2023年)など。Instagram: @guilyuk


Photos: Masami Ihara

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