米司法省、6300万円相当の暗号通貨とNFTを騙し取った容疑者を起訴。古風な手口を使ったサイバー詐欺
世界最大のNFTマーケットプレイス、オープンシー(OpenSea)のなりすましサイトを使い、詐欺を働いたとして米司法省が容疑者を起訴。7月10日付のプレスリリースによると、なりすましサイトは「暗号通貨や非代替性トークン(NFT)への不正アクセスが目的」だったとされている。
司法省によると、被告のSoufiane Oulahyaneは2021年9月にオープンシーを偽装したウェブサイトを作成したうえ、利用者の多い検索エンジンにスポンサー広告料を支払って、なりすましサイトが検索でページトップに表示されるよう仕組んだとしている。
公開された起訴状の中で、ニューヨーク州南部地区のダミアン・ウィリアムズ検事が挙げている被害者は1人だけで(名前は非公表)、なりすましサイトが作られた「ほぼ直後」にログインした後、約45万ドル(約6300万円)相当のイーサリアム(ETH)とNFTを失ったとされている。被害者は、暗号資産を保管していた自分のウォレットの詳細をなりすましサイトに入力していた。起訴状によると、被害者が入力した暗号ウォレットの識別番号を利用してアクセスに成功した被告は、自分の管理下にあるウォレットに送金。その後、被害者の所有するNFTを合法的なNFTマーケットプレイスで売りさばいたという。
また、司法省によると、不正に販売されたNFT39点には、人気の高いユガ・ラボ(Yuga Labs)のボアード・エイプ・ヨット・クラブ(BAYC)やミービット(Meebit)のNFTがそれぞれ1点含まれている。
被告はモロッコ国籍の25歳で、外国での犯罪容疑者としてモロッコで拘束されている。今後、ニューヨークに連行のうえ1件の電信詐欺、2件の不正アクセス、1件の加重ID窃盗で起訴され、有罪が確定すれば詐欺で得た全ての財産を没収されることになる。
ウィリアムズ検事はプレスリリースで、「被告は被害者の暗号通貨とNFTを盗むために、サイバー犯罪における一般的な手口である『なりすまし』を用いた。これは古くから用いられている詐欺の手口だ」と述べている。なお、この件での「なりすまし」は、偽装サイトを作ることを指している。
「今回の一件は、こうした古い手口が暗号空間という新しい分野に応用された例だ。起訴状を公開することによって、暗号通貨やNFTのようなデジタル資産にはサイバー詐欺のリスクがつきものであること、そして当局が国内外のこうした犯罪の摘発に全力を尽くしていることが広く認識されるだろう」
US版ARTnewsはオープンシーにコメントを要請したが、記事公開時点で回答は得られていない。
司法省はこれまでも、NFT関連の犯罪摘発を行っている。今年5月には、オープンシーの元社員ネイト・チャステインが、同省による捜査の結果、インサイダー取引で有罪判決を受けた。(翻訳:清水玲奈)
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