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  • 2022.03.30

ジェフ・クーンズ、有名シリーズ作品の真贋をめぐる裁判で敗訴

世間に流通する画像を利用して彫刻や絵画を制作するジェフ・クーンズは、コピーの定義を複雑化させたアーティストだ。作品がオリジナルかフェイクかを判断するのは普通アーティスト自身だが、先頃、イタリアの裁判所がクーンズ作品の真贋に関する最終的な判断を下して注目された。

ジェフ・クーンズ Photo Steve Parsons/PA WIRE/APジェフ・クーンズ 写真:PA Images/アフロ

問題となったのは、80年代後半の「Banality(バナリティ)」シリーズの一つだ。ミラノの裁判所は、クーンズが「満足のいかない試作」だと主張していた2匹の蛇のような生き物の彫刻を、正真正銘のクーンズ作品だとする判決を言い渡している。

訴訟を起こしたのは、1991年にオークションでこの作品を50万リラで落札した保険ブローカーだ(名前は明らかにされていない)。イタリアのコリエレ・デラ・セラ紙によると、《Serpents(蛇)》と題されたこの作品には三つのバージョンがあるという。このコレクターは、そのうちの一つを所有していると主張し、クーンズはそれに異を唱えていた。

クーンズが手掛けた最も有名な作品群の一つである「Banality」シリーズには、《Michael Jackson and Bubbles(マイケル・ジャクソンとバブルス)》など、大量生産品の置物を思わせる彫刻が多数ある。イタリアで裁判沙汰になった作品とは別バージョンの《Serpents》は、2019年にクリスティーズで71万1000ドルで落札された。これは、同シリーズの他の作品がオークションで数百万ドルを付けているのと比べるとかなり安い。

訴えを起こしたコレクターは、1997年に《Serpents》をクリスティーズで10万ドルで売ろうとしたという。その際に鑑定を依頼したクーンズは、これを自分の真正な作品だと認めなかった。この件はニューヨークの裁判所に持ち込まれたが、クーンズは問題の作品は試作だと断言したとされる。

このコレクターはさらに、2014年にミラノのアートディーラーから《Serpents》を買いたいと持ちかけられたと主張している。だが、クーンズがこの作品を「満足のいかない試作」だと断じたことで、売ることができなくなったという。売却計画を何度も妨害されて苛立ったコレクターは、クーンズを訴えることにした。

コリエレ・デラ・セラ紙の報道によると、クーンズは裁判所からこのコレクターへの補償を求められる可能性があるという。一方、このコレクターは《Serpents》の売却を匂わせる発言をしており、「今や、これは非常に値打ちの高い作品だ。このニュースをマーケットがどう受け止めるか見てみたい」と同紙に語っている。

ARTnewsは現在、クーンズが所属するペース・ギャラリーの広報担当者にコメントを求めている。

クーンズと彼の作品は、これまで何度も裁判沙汰になってきた。たとえば、パリポンピドゥー・センターとクーンズは、2014年の回顧展で展示された80年代の作品が盗作だと訴えられた。同作品はファッション広告を利用したもので、2021年に敗訴している。その数カ月後にも、クーンズは別件で提訴された。ある男性から、自分がポルノ女優のために作った台座のデザインが、どぎつい性描写で知られる「Made in Heaven(メイド・イン・ヘブン)」シリーズの中で無断使用されていると訴えられたのだ。

コレクターがクーンズを訴えたのも今回が初めてではない。2018年、スティーブン・タナンバウムは、数百万ドル相当の彫刻が納品されなかったとして、クーンズのスタジオと彼が当時所属していたギャラリー、ガゴシアンを相手に訴訟を起こした。この件は2020年に和解したが、和解金の額は公開されていない。(翻訳:野澤朋代)

※本記事は、米国版ARTnewsに2022年3月11日に掲載されました。元記事はこちら

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