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ハワイ・マウイ島の山火事、芸術文化への深刻な影響。多くの博物館やアートスペースが被害に

8月8日未明にハワイ・マウイ島で起きた山火事では、14日午前7時時点で93人の死亡を確認。数多くの史跡や博物館を含む建物が焼け落ちた。

火災で焼け落ちた旧裁判所(オールド・コートハウス)。2023年8月8日撮影。Photo: Patrick T. Fallon/AFP Via Getty Images

アメリカ民間航空パトロール隊とマウイ島消防署の調査によると、山火事によって島一番の繁華街ラハイナを中心に271棟以上の建造物が被害を受けたという。気象予報士研究者は、この地域が火災に見舞われた原因として、ハリケーンによる強風、乾燥した空気、森林伐採、燃えやすい外来種の牧草の持ち込みを挙げている。

今回の被害について、マウイ芸術文化センターのシェーファー・インターナショナル・ギャラリーのディレクター、ジョナサン・ユキオ・クラークは10日、アートニュースペーパーに次のように語っている。

「山火事がラハイナの街を襲い、壊滅的な被害をもたらしました。多くの人命や家屋、歴史的・文化的遺跡が失われたことに、私たちは計り知れない悲しみを感じています。ラハイナにある多くの文化施設が火災で焼失しましたが、その影響と詳細を把握するには時間がかかるでしょう」

ラハイナ修復財団は、歴史的な町にある14の主要な歴史的建造物を管理しているが、そのうちのいくつかを火災で失った。その中には、1912年に島の中国系移民のための宗教的・社交的ホールとして建てられた2階建ての五行寺博物館や、樹齢150年のガジュマルの木などがある。

AFP通信が8月10日に上空から撮影した映像には、ラハイナ・ヘリテージ・ミュージアムを併設していた旧裁判所(オールド・コートハウス)の外壁だけ残っているのが確認できる。この博物館には、先住民のルーツや宣教師によるキリスト教の伝来、捕鯨産業や観光業など、ラハイナの歴史を包括的に知ることができる資料が展示されていた。

そのほか、1834年に建てられ、マウイ島最古の家と言われるボールドウィンハウスも全焼した。ABCニュースによると、カメハメハ2世など数人の王が埋葬されているワイオラ教会やラハイナ本願寺、122年の歴史を持つ老舗ホテル、パイオニア・インなどが火災の被害を受けた。

焼け落ちたラハイナのメイン通り、フロント・ストリートには、中国人移民の集会所跡を利用したウォヒン博物館があった。そこではアーティストたちのイベントが開かれており、同じ通りにはポリネシアの工芸品や地元の歴史的資料を展示するナ・アイカネ・オ・マウイ文化センターもあった。

ハワイ大学付属ジョン・ヤング美術館の館長兼チーフ・キュレーター、マイカ・ポラックは、アートニュースペーパーに、「ラハイナは、ハワイの文化史にとって非常に重要な町です」と語る。

ラハイナ・レストレーション・ファンデーションは、ラハイナ復興のための資金集めのキャンペーンを開始した。同財団事務局長のテオ・モリソンは、「多くの家屋、企業、歴史的建造物が被害を受け、破壊されています。私たちの町がこの被害から立ち直るために、今、団結する必要があります」と話している。

8月10日、ジョー・バイデン大統領はこの事態を大災害と宣言し、マウイの住民が連邦政府からの援助を受けられるようにした。ハワイ州知事は8月31日まで非常事態宣言を発令し、マウイ島への不要不急の渡航を控えるよう告げた。シルヴィア・ルーク副知事はこの宣言ついて、「援助を切実に必要としているマウイ島の住民のために、少ない資源を優先的に使うことができるようにするためのものです」と説明する。(翻訳:編集部)

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