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  • 2023.08.17

大人気シューズショップ、KITHのキャンペーンに非難の嵐。フェリックス・ゴンザレス=トレス作品に酷似

日本でもカルト的人気を誇るアメリカ発のスニーカーセレクトショップ、KITH(キス)の新しいキャンペーンが物議を醸している。1996年にエイズで亡くなったキューバ出身の現代アーティスト、フェリックス・ゴンザレス=トレスの作品に酷似しているというのだ。

X-MENシリーズの60周年を記念してリリースされたスニーカーの、KITHによるティザー広告。フェリックス・ゴンザレス=トレスによるキャンディの作品に似ているとして、ネット上で非難の声が多数上がった。Photo: Courtesy KITH

X-MENシリーズの60周年記念モデルのティザー広告として発表されたKITHのキャンペーンが、フェリックス・ゴンザレス=トレスの代表作の一つと酷似しているとして、ネット上で物議を醸している。

空間の隅に山積みにされたスニーカーを捉えたこのキャンペーンが7月にお披露目されるやいなや、過去、様々な方法で展示されてきたゴンザレス=トレスのキャンディを山積みにしたインスタレーション作品の模倣ではないかと指摘する声が相次いだ。このキャンディを用いた作品シリーズには、1991年に恋人のロスをエイズで亡くしたばかりのゴンザレス=トレスが同年に発表した《Untitled(Portrait of Ross in L.A.)》も含まれ、これまで様々な場所で形態を変えて展示されてきた。その多くはギャラリーや美術館の壁際や片隅にキャンディを高く積み上げるという方法をとったが、中には、床一面に敷き詰めて展示されたものもある。

デザイナー兼作家のElizabeth Goodspeedは、X(旧Twitter)に「KITHがX-MENシリーズの60周年記念モデルのドロップに際して、パートナーの死を悼んだゴンザレス=トレスの作品をパクったなんてショックすぎる」と投稿すると、たちまち30,000以上の「いいね!」がついた。

《Untitled(Portrait of Ross in L.A.)》は、そのタイトルが示す通り、ゴンザレス=トレスのパートナーであったロス・レイコックの肖像画と言える。これを含む全てのキャンディ作品には「理想体重」が設定されており、《Untitled(Portrait of Ross in L.A.)》の場合は175ポンド(79Kg)で、成人男性の平均体重に相当する。フェリックス・ゴンザレス=トレス財団が提供する材料リストによれば、これらのシリーズ作品はどれも「無限のキャンディ」でできており、鑑賞者がキャンディを持ち去ったり消費したりするたびに補充される。

《Untitled(Portrait of Ross in L.A.)》を含むゴンザレス=トレス作品は、エイズ危機、死、あるいはその両方について描いたものというのが一般的な解釈だが、ゴンザレス=トレスは生前、これらの作品について様々な角度から論じている。1990年の《Untitled(USA Today)》は、赤、白、青のお菓子をモチーフにした作品で、同名の新聞を想起させる。また、《Untitled(Portrait of Marcel Brient)》(1992)は、青い包み紙に入ったキャンディーの集合体で、ゴンザレス=トレスの作品を購入したフランスのコレクターを暗示している。共通するのは、これらの作品がいずれも空間の片隅で展示されるという点だ。

X-MENシリーズの60周年記念モデル自体はマーベルとアシックスによるコラボレーションで、X-Menのキャラクターへのオマージュとして、7タイプの「GEL-LYTE III」新バージョンがリリースされた。このコレクションの発表に際して、関係各社はゴンザレス=トレスの作品について言及していない。

KITHのキャンペーンである壁に高く積み上げられたスニーカーの写真は、この新しいGEL-LYTE IIIを宣伝するためのティーザー広告に過ぎず、ゴンザレス=トレス作品との類似性は、意図したものではなかった可能性が高い。とはいえ、ゴンザレス=トレス作品とスニーカー、どちらも重要な文脈と強烈な感情的意味を有しているにもかかわらず、視覚的に類似していることを誰も思いつかなかった/知らなかったというのは、重大な見落としだと言える。US版ARTnewsは、KITHの広報担当者、および、フェリックス・ゴンザレス=トレス財団の代理人にコメントを要請したが、いずれも現時点で回答はない。

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